ファッション業界で活躍する若手クリエイターをピックアップ
山縣 良和
1980年、鳥取生まれ。2005年、セントラル・セント・マーティンズ美術大学を首席で卒業。在学中にジョン・ガリアーノのアシスタントを務める。帰国後、07年に玉井健太郎(09年に独立)とともにリトゥンアフターワーズ設立。08—09秋冬より東京コレクションに参加。2014年毎日ファッション大賞特別賞を受賞。
日本のファッションをリードする気鋭のクリエイター。英国セントラル・セント・マーチンズ芸術大学に留学した経験を持つ。
“海外”で学んだことによる気づきや、日本を離れたことでもたらされたものは? 世界を知る彼らが目指す次のクリエイションは?
writtenafterwardsのデザイナーとして、その独創的なクリエーションで注目を集める山縣良和氏。英国セントラル・セント・マーチンズを首席で卒業、という華々しい経歴の持ち主でもある。だが、決してすべてが順風満帆というわけではなかった。特に渡英する前は、いろいろなことが上手くいかなかったという。「このままの人生を送りたくない」という思いで、自らを奮い立たせ、留学を決意したのだ。
イギリスでは、自分を客観視することを学んだ。「世界において、自分や日本人がどういうふうに見られているのか。また、世界各国から集まった人たちのまったく違う価値観、美意識、色彩感覚、造形の捉え方などのなかで、自分の美意識に向き合うことができた」。そして、“自分に求められるもの”の変化に合わせて、新たな自分を引き出し、成長していった。留学時代には、世界のトップデザイナーたちと仕事をするなど、貴重な経験を得る。 「世界のトップの人たちは、どういうレベルなのか。それを肌で実感した経験が、今の自分の一つの物差しになっている。世界を動かしている才能を実際に見たことで、どこまで自分が頑張ればいいのか、それがわかった」
現在、自身のブランドに加えファッションデザイン教室「ここのがっこう」など、さまざまな活動を通してファッションを発信し続ける山縣氏が、これから目指すのは?「絶対にパリというわけではないが」という前置きのもと、「選択肢の一つとしてパリを意識しながら、世界のフィールドを目指している」と言う。やりたいことは、「例えばエルメスとかルイ・ヴィトンとか、100年単位でクラフトマンシップを培ってきた尊敬するブランドと、自分のクリエイティビティとを合わせたものがつくれたらすごくいいですね」と語る。さらに将来については、40代、50代、60代でも勝負できる自分でいたいと答える。「川久保玲さん、山本耀司さんなどは、40歳前後でパリコレに行って、歴史的なものを打ち出している。40代、50代、60代でももっと戦っている自分でいたいので、この30代でどこまで下地をつくれるか、それが今の自分の勝負かなと思っています」。
文/ナオヨ ・マディソン
撮影/細谷聡