ファッション業界で活躍する若手クリエイターをピックアップ
計良 陽介
新潟県生まれ。文化服装学院通信教育でファッションデザイン画を習得。2002年、フランス・エスモードパリ校に入学。エスモードパリメンズ科卒業後、元ディオール オムのデザイナー、ニコラ・アンドレア・タラリスに師事。2006年、日本へ帰国。企業でメンズのデザイナーを9年務め、14年、東京都が主催する「TOKYOSTARTUPGATEWAY」のセミファイナリストに選出される。15年、自身のブランド、TH_READ創設。
ファッション界に新しい旋風を巻き起こす新進気鋭のクリエイターたち。次世代を担う彼らのクリエイションとは?ファッションで目指す世界観とは?
20歳でフランスへ渡り、エスモードパリ校にてテーラーリングを学んだ後、元ディオール オムのデザイナー、ニコラ・アンドレア・タラリスに師事した経験を持つ計良陽介氏。帰国後、メンズブランドのデザイナーを務めるなか、中国やベトナムなど外国製の服であふれる日本の繊維業界の低迷に危機感を抱く。この思いが、自身のブランド「TH_READ(スレッド)」を立ち上げるきっかけとなった。
「最上級の原料を使い、職人の巧みな技術で生み出される日本の生地には、上質で繊細な風合いがあります。そのクオリティの高さは、多くのヨーロッパメゾンからも信頼が寄せられる、世界に誇るべきもの。そんなジャパンテキスタイルの技術と価値を基軸に、服づくりを手掛けていきたいと考えました」
国内企業のデザイナー時代、日本各地の生地の産地へ足を運び、共同開発した素材数は100種以上。しかし、条件が見合わずに生産を断念せざるを得ないケースも多々あったという。そして、「いつかこれらの機屋さんと組んでプロジェクトを」という思いが見事に結実したのがスレッドの服。現在、計良氏が惚れ込んだ3つの生産工場との丁寧な取り組みによって、服づくりが展開されている。山形県米沢で生産されるシルクのシアサッカーや愛知県津島のフォーマル生地で仕立てられたジャケット。静岡県浜松の織工房による最上級のフィンクスコットンを使用したシャツ。どれも特有のなめらかな肌触りが味わえる。「タッグを組ませてもらっている機屋さんは、スレッドの企業理念を伝えた際にすごく共感してくれました。服をとおして日本の生地の魅力を世界に発信しながら、繊維産業の背景まで伝えていきたいです」
戦略的なブランディングもスレッドの特徴のひとつ。2014年、東京都が実施する「TOKYOSTARTUPGATEWAY」のセミファイナリストに選ばれ、起業を目指す多分野の人たちと共に、ビジネスモデルを構築するための基礎や考え方を学んだ。また、クラウドファンディングの「MAKUAKE」を活用し、支援者を募りながら活動を広げていくなど、新しい枠組みも積極的に取り入れている。
「展示会のお知らせをDMで送ってもレスポンスに限りがありますが、ITや新しいメディアの力を有効活用して情報を発信すれば、絶対数を飛躍的に増やすことが可能。フェイスブック、インスタグラムなどのSNSから形成されるコミュニティも大事な伝達の場です」
まずは日本中、ひいては世界中の人に目にしてもらう機会を設け、展示会で直接商品に触れてもらうというアプローチで、集客数はもちろんブランドの浸透性も高めている。
「ファッションという言葉は、フランス語でモード=時代。時代は、ひとりの力でつくれるものではありません。アンディ・ウォーホルがファクトリーを構え、そこからクリエイションやミューズが生まれて文化となり、一時代が築かれたように、日本人がつくった生地と自分がつくったデザインに共感してくれる人、信頼できるスタッフや仲間と共に、新しいムーブメントを起こしていきたい。100年後にも色褪せることなく、語り継がれていくようなブランドを目指します」