ファッション業界で活躍する若手クリエイターをピックアップ
TAMAKI FUJIE
2003年、立教大学社会学部を卒業後、渡欧。アントワープ王立芸術アカデミーを経て、09年、セントラル・セント・マーチンズ芸術大学を卒業。在学中、アレキサンダー・マックイーンの下で研修。13年春夏コレクションより、自身のブランド「TAMAKI FUJIE」を発表。15年、2020東京オリンピック・パラリンピック大会に向けた、東京都観光ボランティアのユニフォームデザインを手掛ける。
ファッション界に新しい旋風を巻き起こす新進気鋭のクリエイターたち。次世代を担う彼らのクリエイションとは?ファッションで目指す世界観とは?
2013年に自身のブランドを発表して以来、様々な要素がミックスマッチした服として注目される「TAMAKI FUJIE」。プリントや柄、色やテクスチャが自由自在に織りなされた服は、ファッションの楽しさにあふれている。
「洋服は前向きな気持ちにさせてくれるものであってほしいという想いがあります。自分も服のそんな力に助けられてきたひとり」と語る、デザイナーの藤江珠希氏。
大学時代にファッション雑誌のエディターを目指し、渡英。留学先の美術大学ではグラフィックやファインアートを学んだ。その後、自分自身でものをつくることに興味を持ち始め、ファッションを学ぶためにベルギーのアントワープ王立芸術アカデミーへ入学した。「祖母が洋裁の専門学校を開いていたこともあって、子供の頃からミシンで遊んでいるような環境で育ちました」という藤江氏にって、ファッションデザイナーを志すことは、いたって自然な流れだった。そして、服づくりを学んでいくなか、オリジナルのプリントをつくりたいという気持ちが強くなっていく。アレキサンダー・マックイーンやジョン・ガリアーノのデザインが好きだったこともあり、再び渡英。ファッションプリント科を設けるセントラル・セント・マーチンズ芸術大学へ入学し、2年間、プリントデザイナーとしての技術や概念を学んだ。
「イギリスは素材が豊富な国です」と、藤江氏。生地の小売店も多く、品揃えもユニークで、実験的な素材に触れる機会も多かった。それが服づくりの環境としてとても刺激的だったと当時を振り返る。帰国後に自身のブランドを立ち上げてからも良い素材との出合いを求めて、日本全国各地を巡っている。シーズンテーマに"モダンヒッピー"を掲げた2017年春夏コレクションでも多く登場する、ジャージ素材もそのひとつ。
「布団にして眠りたいくらい気持ちのいい肌触りで、この素材で服をつくったら、人は喜んでくれるだろうなと思いました。オリジナルで生地をつくることは、ビジネス的に難しいこともありますが、最終的には生地づくりから手がけていきたいと思っています。」
自身のクリエイティブを今一度噛み砕いたところからスタートさせた今シーズンのコレクションは、これまでとは少し趣が変わり、新たな表現が加味されている。
「学生の頃から洋服に限らず、"過去"に興味がありました。過去とこれから先の未来をミックスしたい。それが結果的に素材をミックスさせた表現につながる」
現代のどこか疲弊している風潮に対して、気持ちを静め寛げる素材を選び、ノルスタジックさとリラックス感をデザインに落とし込む。表現豊かな素材と巧みなクチュール技術で"ドレス"な雰囲気に仕上げるその独自の世界観は、特に海外で受け入れられている。
「取引先はアメリカをはじめ、香港、イタリア、上海、台湾など、9割が海外です。今後は日本の市場に向けて、新しいデザインや服を提案していきたいですね」