ファッション業界で活躍する若手クリエイターをピックアップ
勝井 北斗/八木 奈央
勝井 北斗氏:1973年、東京生まれ。アメリカ・ニューヨークのパーソンズ・スクール・オブ・デザインで学んだ後に渡英し、セントラル・セント・マーチンズ芸術大学を卒業。
八木 奈央氏:1973年、大阪生まれ。同志社大学美術芸術学科を卒業後、渡英しセントラル・セント・マーチンズ芸術を卒業。2001年にミントデザインズ設立。03年春夏より東京コレクションに参加。
日本のファッションをリードする気鋭のクリエイター。彼らは英国セントラル・セント・マーチンズ美術大学に留学した経験を持つ。“海外”で学んだことによる気づきや、日本を離れたことでもたらされたものは?世界を知る彼らが目指す次のクリエイションは?
勝井北斗氏は、ニューヨークのパーソンズを、八木奈央氏は同志社大学を経て、ともに英国セントラル・セント・マーチンズにて学ぶ。教科書や黒板を使った、いわゆる“授業”は、一切行なわれない。先生が一方的に教えることはなく「受け身でいると何も進まない」と、二人は当時の授業を振り返る。そして、とても大事なのが“言葉”。自分たちの描くイメージをどのように伝え、いかに説明して、周囲の人たちにやる気になってもらうか。日本の学校で教わることは少ないが、イギリスで重視されるのがこのプレゼン能力だ。デザイナーを育てるこの学校で、徹底的に鍛えられたこのスキルが、実社会でいかに重要かを、自身のブランドを立ち上げて改めて実感したという。
目的意識の高い同級生と切磋琢磨する環境にいたことも大きい。周りからの刺激で、自然と意識が高くなり、制作にも貪欲になった。学生のうちに、洋服の本場であるヨーロッパで本物に触れる時間がたっぷり持てたことも、貴重な礎となった。
スピードの速いファッションのトレンドに流されることなく、プロダクトのような息の長い服づくりを目指すミントデザインズ。「日常のなかに自分たちのデザインを落とし込みたい」という彼らは、異業種とのコラボレーションも意欲的に取り組む。これまでに創り出したプロダクトは、マスク、和菓子、コスメ、テーブルウエア、家具、浴衣、マスキングテープなど、多種多様だ。様々な仕事を通じ、新しい人や価値観に出会うことで、彼らも進化し続けている。
ミントデザインズがこれから目指す方向のひとつにパリがある。「一流の人が一番集まる場所“パリ”で、見てもらいたい」と勝井氏は言う。そして、そこに辿り着くまでにどういうステップを踏むのか、を目下模索中だ。その先に描くのは、彼らのデザインが日常のなかにとけ込む風景。公共物や建築家とのプロジェクトなど、大きなものにも挑戦したいと考えている。彼らのデザインするものが、今よりもっと身近に溢れる日も、そう遠くないかもしれない。
文/ナオヨ ・マディソン
撮影/細谷聡