ファッション業界で活躍する若手クリエイターをピックアップ
田中崇順/松本志行
セントラル・セント・マーティンズ芸術大学在学中からJohn Galliano、Christian DiorやMiki Fukaiにて経験を積んだ田中氏。文化ファッション大学院大学出身で複数のデザイナーズブランドで働いた松本氏とともに、2011年、divkaを設立。12年、MANGO FASHIONAWARD 4th Editionにて10人のファイナリストに選出。同年TOKYO新人デザイナーファッション大賞プロ部門にて東京都知事賞受賞。2016年春夏、2016年秋冬で東京コレクション参加。
ファッション界に新しい旋風を巻き起こす新進気鋭のクリエイターたち。次世代を担う彼らのクリエイションとは?ファッションで目指す世界観とは?
着た瞬間、 ハ ンガーに吊るされていた時とまったく異なる ”ドラマチック" な表情に変わる――。
「divka」 のデザインは、 「体に纏ってこそ完成される」 とデザイナー 田中崇順氏は語る。
「平面のパターンから起こすのではなく、 布を使 い、 ボディで彫刻の"立体" でデザインする手法を取っ て います。 僕が目指すのは、 『世の中にまだな い美しさ』 。 デザイン画を描くのではなく、 立体を使って感覚的につくっていく行為で、 自分の枠を一歩越えたインスピレーションを受ける。そこで面白いと感じたことを発展させ、 まだ見ぬデザインに つなげます」
高校時代からファ ッショ ンが好きで、 自ら服を創作して いた田中氏は、 卒業後、 渡米。 アートの基礎を学び、その後ロンドンのセントラル ・ セント・マーチンズ芸術大学で5年間学んだ。「デザイン画から発想をして いたセントラル・セ ント・マーチンズ時代、講師から 『君が表現した いものを直接つく っ てみたほうが い い』 と言われ、 この手法に辿り着きました」
そうして生まれたデザインをリアル・クローズとして実現するの が、パ タンナーの松本志行氏だ。文化ファッション大学院大学を卒業した後、 いくつものデザイナーズブランドで経験を積むなか、 日本に帰国した田中氏と出会 っ た。
「彼の作品を見た時、 『天才だ』 と思いました。 僕自身、 世の中にまだな い美しさを形として実現したいと思っ て いたので、 田中の志に大きく共感しました」
田中氏が立体で生み出したフォ ルムを服としてどう洗練させて いくか、モデルに フィッティングさせながら二人で話し合う。
「僕のデザインは松本の手によ って "服" として完成します。 裏側の始末まですべて美しく仕立て上げる方法を発想し、 未完成なものを完璧な服として仕上げるのが松本の仕事」 と田中氏。 創造と技術、 二人の才能と発想力によ って 「divka」が誕生したのだ。
「divka」 のこだわりは、 立体としての形の出方と、その着心地のよさにある。
「着た時に"特別な一着"となる喜びや発見があることを大切にして います。 現在、 海外展開もしていますが、 拠点はやはり日本。僕らのデザインやパターンは非常に難解なため、生産工場と密に コミュ ニケーショ ンを取ることが必須ですから」 と田中氏。
当初は理解されずに苦労したが、 「こう いうものを縫うのは初めて。 感動した」 と言われたことも。
松本氏は、 「完成度が高い作品をできた時の充実感は本当に大き い」 と頷く。 また、 生地も100%国産にこだわり、 田中氏がプリントデザインも手掛ける。
「アナログな手触りを残すため、プリントにはペインティングやドローイング、 版画の技法などを使います。 2016年秋冬のコレクションでは、描き途中の鉛筆画のスケッチをプリントし、あえて"未完成"な面白さを表現しました。次のシーズンで12回目のコレクション。世界中の一人でも多くの人に自分たちの服を着てもらうことが目標です」
常に"まだ見ぬ美しさ"を生み出すために挑戦を続ける二人の、この先に注目したい。