ファッション業界で活躍する若手クリエイターをピックアップ
青木 明子
1986年、東京都生まれ。2009年、女子美術大学卒業後、英国に渡り、セントラル・セント・マーチンズでファッションを学ぶ。帰国後、writtenafterwardsの山懸良和が主催する「ここのがっこう」で日本のファッションビジネスを学び、MIKIOSAKABE、Jenny Faxのアシスタントを経験。14年、自身のブランドAKIKOAOKIを立ち上げる。
ファッション界に新しい旋風を巻き起こす新進気鋭のクリエイターたち。次世代を担う彼らのクリエイションとは?ファッションで目指す世界観とは?
2014年に「AKIKOAOKI」をスタートさせた青木明子氏。女子美術大学を卒業後、英国セントラル・セント・マーチンズで学んだ経歴を持つ。
「女子美在学中に、英国から帰国したばかりの山縣良和さん(リトゥンアフターワーズ)やアントワープで学んだ坂部三樹郎さん(MIKIOSAKABE)と話をする機会があったんです。コンセプト重視の日本のファッション教育に対し、海外の教育には軽さ、フレキシブルさがあると感じて、留学に興味を持ちました」
実際にその目で見たセントラル・セント・マーチンズの授業を「コンセプトを大事にしながらも、ファッションそのものを柔軟に受け止め、自由であること、装いとしての格好よさがより重視されていた」と評する青木氏。また、学校だけでなく、ロンドンの街そのものから受けた刺激も大きかった。「 夜7時までオープンの店が6時で閉まったり、治安が悪いエリアがあったり。秩序のある東京では考えられないようなことばかり。でもそれも〝ありだな〞と思うようになった。日常の不便さとか怒りとか、そういう日々の感情からインスピレーションを得ることが多くなりました」
AKIKOAOKI立ち上げ後、これまでに3つのコレクションを発表してきた。初回は「抑圧された女子校」がテーマ。15年間ずっと私立の女子校に通った自身の、〝一番部分〞をさらけだした。
「あの頃は個性を抑えつけられて、自分がパーツの一部になったような虚無感があった。そのイメー ジを、レイヤードしないと着られない服や、一枚では完結しない未完成な服に重ねました。もともと 私はそういう抑圧から、個性を表 現できるものとしてファッションに 興味を持つようになったんです」
2度目のコレクションでは〝男の子っぽい女性〞を意識。
「実は韓国の男性アイドルにハマっていた時期で(笑)。きれいでかわいくて、性別は違うのに自分も そうなりたいという気持ちになる。ジャケットやワイドパンツもメンズのイメージですが、ディテール はニットレースなど繊細なもので装飾的につくりました」
3度目のコレクションは新境地に挑戦。過去2回は自分の中にあるイメージを忠実に再現するコレクションだったが、その一貫性をあえて手放した。
「素材もデザインもバラバラ。それでもアイテムが集まると言葉ではうまくカテゴライズできないような、一つの新しい女性観が浮かび上がる。そんな服づくりが今は面白いです」
「いつかはヨーロッパで活動したい」
と青木氏は言う。
「今、自分が『いいな、すごいな』と思うものは日本だけではなく、海外にもあります。そこには 、クリーンで安全な東京からは生まれ得ない何かがあると感じています。今まで共通の価値観として〝 良い〞〝 悪い〞があったとしたら、〝悪い〞が〝良い〞にいきなり変わるような闇雲なエネルギー。そういったものをずっと求めているんです」