最新イベント情報
れもんらいふ代表の千原徹也さん・gumi-gumi代表の軍地さんをお招きして、ファッションをテーマとしたトークイベントを開催しました。
司会 「今日のテーマはファッションの未来。ファッションとクリエイションについてお聞きします。 お二人のクリエイティブに対する価値観について事前にお伺いしてありますので発表します。ずばり、成功するクリエイティブとはなんでしょうか」 軍地さん『売れないものはクリエイティブじゃない』。 千原さん『人にやさしく』。 これについてお話をお願いします。」 軍地さん 「一番重宝されている自分の良いところは、スタートがギャルブランド、今はNumero TOYKOにいるので、見た範囲が広いということ。 その中で最初の15年、viviっていうところは、ファッションが民主的にガールズカルチャーをつくってきた場所。売れていないものは退化する。 売れることがすべて。それを90年代からやってきた。売れないものにいらっとするときがある。収益があがってこそのファッション。人に着てもらい、インスパイアされてもらう。 ファッションもメディアのひとつ。売れないものをこつこつとつくっているというのはクリエイティブを正面きってやっていないと感じてしまう。 売れるためにつくる人が、クリエイティブの本質を分かっている人。」 千原さん 「依頼をうけてやる仕事なので、せめぎ合いがある。売れるためには文字を大きくしなくてはいけない、でも大きくするとデザイン的にかっこ悪い、みたいな。 そういう時、売れてかつデザイン的にもかっこいい第3の道を見つけなければならない。 アートをやっている人は変わっている人が多い。変わっている人は売れないことが多いが、売ってこそ初めてアートになる。」 軍地さん 「千原くんのいう『人にやさしく』っていうのも今の話と同じ。人っていうのがユーザーであったり、クライアントであったり。人の意見を聞かず自分のテリトリーだけでつくってしまうのも悪くはないけれど、人に売るということを考えると、人のことをすごく考えるっていうのがベースになる。 私は雑誌がどう売れるか、どう伝わるか、読んだ人がどういう気持ちになって服を買ってくれるか。雑誌を出すことが終着点ではなく、 その先も考えるようにしている。セーターの記事を出したとして、それを読んだ人が買ったとして、その次にその人は春に何を買いたくなるか、そこまで考えている。 これをループするのが自分の編集人生。ユーザーとクライアントのバランスをある程度見極めていないと出来ない。」 千原さん 「自分のエゴで仕事をしないことによって、クライアントにも喜んでもらえて、次の仕事につながる。そして次はもっと面白いことが出来たりする。 やっぱりまず、第一には売れること、相手がどう思っているか考えること。」 軍地さん 「誰に対して何を訴えているかという自分のルールがあると、クリエイションに筋が出る。 こういう人に来てほしい、読んで欲しいとか、像が描けている人は仕事が次につながって成功出来る。」 千原さん 「人の要望ばかり聞いていると面白いものをつくれないんじゃないか、と思っていた時期があった。 『もう一回撮影させてくれ!』とかわけわかんないこと言ってみた方が、自分のクリエイションは高まるかもしれない。そう思ってすごく悩んでいた。 クリーク・アンド・リバー社の派遣社員として働いたのが東京に出てきた時。上京して何も仕事が無くて、困っていた時に、クリークに出会った(笑)。 関西にいた時から技術はそれなりに持っていた。でも28歳の人がいきなり会社に来ると『使えない人が来た』って思われたりした。 自分が仕事出来るようになるまで頑張るしかない、と思っているうちにスタンスが出来てきた。どんなことがあっても、色んな人にやさしく接していかないと、次がない。 うけた仕事は必ず終わらせる。それが良かったかどうか、わからない時もある。『またもう一回やってください』と電話で言ってもらえるかどうか。 次の仕事が来てはじめていい仕事をしたとわかる、ということをスタッフにいつも言い聞かせている。」 軍地さん 「クライアントに100%迎合するのではない。どうすればたくさんの人の幸せにつながるということ。 AというビジュアルとBというビジュアルがあってどっちにしようか、という時、たくさんの人が喜ぶ方が正しい、と思っている。民主主義。 一人でもたくさんの人に必要なものをつくるのが売れるために必要。クライアントの意見に従わなくてはいけない、と思って卑屈になるのではなく、 こちらの方が売れますよ、とクライアントに意見を言っていく。この基準を持っていれば、AとBの選択は案外単純。」 千原さん 「全部言われたことを肯定するのではなく、選択してあげることがやさしさ。 クライアントのいったことを100%やることが一番良いことなのではなく、否定しながらもより良いところを見つけていく。それが自分のクリエイションとしては大事。」
司会 「もう少し話を発展させて、近い将来のファッションについて、クリエイションの分野で注目されている事象、 メディア、ビジネス…、お二人が気になっていることがあれば教えてください。」 軍地さん 「私の分野のファッション、売るファッションでいうと、圧倒的な『二極化』ですね。 価格、クリエイティブすべてにおいて二極化。中間は売れない。日本の経済的なリッチ層、中間層、下層も二極化。これは先進国の運命。 今後は、安いもの、高いものでも、どういうエクスペリエンスをつくるのかというのが大事になっていくと思います。一番大変なのは中間層ですね。 20代で1万円代とかばんばん買っていた層がどんどん厳しくなっている。 今までの広告みたいにこの服はかわいいですよ、と提案しても、どんどんユーザーの方が『その服3万円するけど、3000円でも買えちゃう』っていう風に、 ユーザーが主導権を持っている。インターネットでチェックすると、同じグレーのニットでも、安く売っているのがすぐわかってしまう。 広告は、ある種のウソをついていた。ビジュアルをつくっている我々は、そこの夢をつくっていたのだけど、 怖いことにWEARとかができてくると情報を伝える雑誌もいらなくなる。一番怖いのは、ユーザーがイニシアチブを持つ、ボトムアップで情報がくること。 今まではファッションショー、コレクションがパリ、ニューヨーク、ミラノであって、そこから情報がおりていって、着ているブルーのベルトは誰々がショーで発表した影響であなたは10ドルで買った、みたいなルールがあった。でも今はユーザーがものを決める時代になってきている。」 千原さん 「SNSの存在も大きいね。」 軍地さん 「SNSがやったこととは、本質をあばく、ということ。本当のことがわかってしまう。 ものの価格も『どこどこの方が安い』とすぐ共有される。嘘がつけない。広告の立ち位置がすごく難しくなった。嘘をつく広告が暴かれてしまう。 色んなことが経済化しちゃうので、民主的だなあとも思う。ただ物の価値っていうと、私たちがつくっている値段ではないものが正しいと言われ始めると、 ああこれからの広告大変だろうなとか思いますね。最近の広告、インフルエンスムービーとか、増えてるよね。 嘘をつけなくなった広告、これからリアル体験に近いところにもっていかないといけない。いろんな嘘、ビジュアルだけのもの、そういうのが露見している。 ないものに価値をつくってしまっていた。本質的に売れるものをどうつくるか考えるのが大事。」 司会 「では次に、発想のヒント、ファッションクリエイションに必要な力など、クリエイティブに関するお話をお願いします。」 軍地さん 「発想は、人。人からもらう情報がすべて。いろんなジャンルの人。Facebookもそういう場にはなっている。いろんな人と知り合う。 今の若い子って、人との付き合い方、知り合い方がすごく飛躍している。今までいろんなアシスタントに、最初はこの業界のルール、 編集のルールとかを徹底的に一年間教えていたけど、今ではいらない。」 千原さん 「こういう修行を経たからこうなっている、っていう常識が通用しなくなっている。」 軍地さん 「某タレントさんと話した時、誰々っていうイラストレーターさんが面白いから飲みに行きたいって言われて、じゃあその人知ってるから紹介してあげるって言ったら、 ううんインスタグラムでやりとりしてるから大丈夫、と言われた。コネを作るために事務所に入るとか、本当に必要なくなったんだよね。 必要なのは積極性とか、何か自分の看板を発信すること。手を伸ばしさえすればどこにでも手が届く。」 千原さん 「うちのアシスタントは23、24歳。僕は何年か修行してコネをつくるべきって思ってたんだけど。例えば僕が新人アーティストのCDジャケットのデザインをやっていると、終わった頃にそのアーティストとうちのアシスタントが友達になってたりして。勝手にFacebookとかで友達になっていて、今度飲みに行くんで千原さんも来ませんか、とか。ああ、そうやって人ってつながっていくんだって。そこを脅威として認めなければならないと思っている。 そんなの非常識だろって否定ではなくて、そういう時代がきている、ということを受け入れなくてはいけない。人のつながりってすごい、最近そう思いますね。」 軍地さん 「個が立てばそれができると思っていた。自分の力があれば。こないだナカザトノリコちゃんっていうデザイナー・アーティストをNumeroで取材した。 今丁度個展をやっている。若くて面白いアーティストに会うっていうのをテーマにしていて。ヨーロッパで一番大きいとされているアクセサリー系の特賞をとったらしい。 ガラクタ、ジャンクを再利用したようなアクセサリー。一番面白かったのは、自分が中心でものをつくるって思っていないこと。仲間でつくる。 芸大は個人でつくる力をつけさせようとしている。一人でものを最後までつくりきるようにと。でもナカザトさんはアクセサリーをつくり、カメラマンの友達が撮り、メイクアップアーティストの友達もいて、モデル役もいて、ムービーにもなっていて…。個で立たなくても仲間でできる。 SNSのようなネットワークですね。自分ひとり、頑張らなくてもいいっていうゆるい空気感もある。クリエイティブの作り方として面白いなと思っているし、新しい。 チームであることがかっこいい、しかも巨匠とかではなく、同じセンスを共有している友達。私たちみたいなプロからみてもすげえ!ってものが出来ている。 偉い人がまったく関わっていないのに、海外でぽんっと認められて賞をとった。この時代感が面白さ。空気を読まないようなクリエイティブ力、突破力も感じるし、それは一人じゃなくていい。これが最近のものづくりの現場。」 千原さん 「若い人たち、空気を読まないんだよね。僕は空気読んでやってきたんだし、そんなんじゃダメだと指摘するけれど、5分後にはケラケラ笑っている。 言っても仕方ない時代がきたんだな、と。友達同士で面白いクリエイションをどんどんやって報告してくる。逆に、そこを伸ばした方がいいかなって最近は思ってる。」 軍地さん 「これまでは、下積みがあって、中堅がいて、上の人がいて。将棋でも初段から始まるように。」 千原さん 「何でそんなにすっ飛ばせるんだろうって、腹立つ気持ちもある(笑)。でも逆にそれに自分も乗っていかないといけないとも思う。」 軍地さん 「『飛躍』っていうのもキーワードだなって。初段がいきなり竜王と闘う、横綱を負かす、みたいなことがすごく起きてくる。 平成生まれあたりから空気ががらっと変わっているから、こっちがその波を食らっちゃうっていう恐怖がある。 大事なのはその初段が二回目も竜王を倒せるのか。それをサポートするのが上の役割だと思います。 何を突破力にするのか、自分の力にするのかっていうのは、簡単に言えばオリジナリティなんだけど、最近の若い子って日本を背負ってるなあっていう印象。 ノリコちゃんもそう。盆栽でスワロフスキーアートつくったりしてるんですよ。意外とメイドインジャパンの力が、若い人の突破力になるのかもしれない。 日本だけの勝負だけじゃなくて海外も。媒体もSNS。SNSでフォロワーを持つことが高い価値を持つ時代。すごく自由。 ウェブサイトひとつもっていれば、突破力でちゃんと伝わる時代。」 千原さん 「そこに何とかしてついていかないとね。」 軍地さん 「千原さんってそういう存在なんですよ。突破力を持っていて、たった3年で大きなビジュアルをつくれる人になっちゃう。3年って衝撃。 イラストをモデルの顔に描くっていうとんでもないことをやっているから、突破力、飛躍、オリジナリティ、信念を生んでいる。 ファッションという別ジャンルでも、共通する。」 千原さん 「3年だけなので、まだかかわっていない人、1回しか会っていない人がたくさんいる。一発屋芸人みたいなところがある。 いろんな仕事がもらえて、3年経った。ここから先、もう一巡させてもらうというのが僕の勝負だと思いながらやっている。 若い友達同士でやっている人たちも、一発屋のその先が大事。2回目がくるかどうか。」 軍地さん 「そこを抜けるための地固めっていうのが人であったり、発想力がどうつながってくるか。」 千原さん 「いま、仕事がたくさんあるんですよ。さっき『人にやさしく』って言ったように、丁寧にやるしかない。次をもらうために。最近新しい人に会ったら、 その人を使えるんじゃないか、と。全員仕事につなげるよう考えるようになった。すべてを仕事としてとらえていく。 それをストックしておけば、仕事がきたときに、あの人使おう!っていう瞬発力が生まれる。それがすごく楽しい。 さっき言っていたような、チーム。発想源はやっぱり人。」 軍地さん 「人からなにを吸収するか、人によって違う。 千原くん、よく代官山のツタヤにチームの人とこもるよね。いろんなアーカイブを掘りに。」 千原さん 「雑誌を毎号買っていても、忙しくて読まなかったりする。でも若い人には情報を吸収してもらいたい。月に1回代官山のツタヤに行く会をやっている。 ばらけて好きな本を探して、2階のラウンジに集まって見ながらお茶を飲む。それをやると新しい情報が入ってくる。しかも楽しい。 そういう体験する場所をつくっておかないと、雑誌を読むだけだと情報として脳みそに入ってこないよね。」 軍地さん 「あと、MDの力が強すぎるっていう悩みをデザイナーさんが抱えている。MDの方も、やってもやっても売れないと悩んでいる。売れない時代に入っている。 するとMDはデザイナーに対して、データで『今はトレンチコート出さないとだめですよ!』と求める。 ファッション業界って古くて、去年のものをリプレイすることが多い。私がそこで言っているのは、MDを無視するということ。MDさんが聞いたら怒るけど。 これまではMDが、ユーザーのクローゼットを読めた。でも今では買わない人の方がデフォルトになってきた。どれだけ魅力的な服が見つかるかが大事。 ある程度MDを無視してでも、今欲しいと思うもの、自分がそれを着たらキラっとできるという体験、それを服に落とし込めた人が上手くいっている。」 千原さん 「僕が広告屋として思うのは、ひとつのブランドが『今シーズンはミリタリーなんです』と言ったとしたらほかの5つもミリタリーと言う。 1個のアイディアに対して5つ考えなければならなくて大変。でもそこで違うことを言えた方がいいんじゃないかと思う。なんでこうなっちゃうんでしょうね。」 軍地さん 「決まった枠がある。今季ならスポーツっていうテーマが売れる。こういうものが流行するだろうというガイドラインができて、生地ができて、 大体1年前からメーカーさんは仕込んでいる。今は突発的に誰かが着ていたコートがドンっと売れたりする。 自分のマインドがユーザーの近いところにあれば、今はミリタリーよりももっとラフなのが着たいんだよねって言えるはず。 大人的なルールがきかなくなっている。今まではこの時これが売れるというストーリーがあった。 白が流行った次はこれ、景気の悪いときはミニスカートが流行る、とか。みんなの言うような流行というものが存在した。 最近、『今年の流行は?』と聞かれたりすると、『そもそも流行っていうのはもうないんですけど』って頭につける。みんなが共有できる流行っていうのはない。 90年代はアムロちゃんが着た次の日にバーバリーチェックのスカートがぐわーって何万枚売れた。影響力のある人が出て、ものがボンと売れるマス商品の時代だった。 今は個が個で必要なものを着ている。あなたの好きなように、って。そういう時代だからこそ、『本当に着たいものはなに?』って会社のルールとかMDのルールを外したところで一回考える必要がある。 ユーザーとのコミュニケーションの取り方も考えて洋服づくりをしたほうがいい、と色んなところで言っている。 体験を通じて、安いけれども楽しいっていう風にしていければいい。 そうやって発想を変えていくのがファッションの仕事をしていくうえで大事。」
司会 「質問コーナーにうつります。」 質問者1 「若い人とのかかわりを重要視している、というお話がありましたが、そのスピード感についていくのには辛さもあります。 このあたりに関してお聞かせください。」 千原さん 「同化する、ということ。自分たちのルールはいったん置いておいて、彼女たちに合わせてみる。若い人と付き合えば付き合うほど、情報も入ってきやすくなる。 自然と速くなっている感じ。スピード感、と感じている間はまだスピードに追い付けていないと思う。自分はファックスもない時代から働いている。 今の時代は本当に速い。でもそれが仕方ない。新しい人と付き合わないと、追い付けない。」 軍地さん 「自分のやり方でやりたいと思うけど、若い人のやり方に自分も入っていくしかない。 デザイナーの大御所とかで、今までのやり方を続けている人もいるけれど、ツイッター、インスタグラムとかどんどんやっていかなければならない。 若い人とコミュニケーションとって、新しいやり方を吸収して、自分のやり方・ルールをつぶしていかなくては。」 千原さん 「自分は一生懸命紙をつくってきた者なので、校了でこの色はダメだわ、とか何時間もかけて、やることはしっかりやって。それは自分のアクセル。 でもSNSとかを中心に話しているときは違うドライブのアクセルを踏む。ハイブリッドにその場その場で。 じっくり手仕事をするのも大事だけど、両方きちんとアクセルの踏み方を知っているというのが必要。」 質問者2 「流行ではなく、個人の好みに着地するというお話がありました。アプリで言うと”UTme!”のように、お客さんが創造するような。 そのようにお客さんがデザインするということについてどうお考えですか。また、この流れの先に何があるか展望があればお聞かせください。」 軍地さん 「個の時代になっているので、自分のオリジナルをつくるというのは最上級のもの。それでも物の価値をきちんとつくっているところは、ちゃんと商売として受け入れられている。 オーダーメイドももちろんあるけれど、それで全てのプロダクトがつくれるわけではない。自分のファッションセンスを持っている人に、やっぱりすごいと思ってもらえるものをつくる。 実は最近私は雑誌の作り方を悩んでいる。売れなくなっているし、Numeroで今年決めたことが『クリエイティブをふりきる』ということ。紙が好き、という感覚を残す。 デジタルは自分の記憶に残りづらい。記憶に残るものをつくろう、と。クリエイティブの分野でもそうで、捨てられるものじゃなく残すもの。 自分でつくったオリジナリティのあるものだったら捨てない。大量生産の服だったら来年捨ててもいいやって思うものもあるけれど。捨てられない物をいかに作り手側が作るか。 Numeroファッション党というのをたてて、『ファッションが世界を救う』みたいなバカなことをあえて言って、グサッとくるようなものをつくっている。 ある程度記憶に残るものをつくるのが、これから大事。SNSやWebは記録には適しているけれど、記憶には残りづらい。 私たちがやらなければならないのは記憶の仕事。そこがずれなければ、どういうものも残る。」 質問者3 「キャリアについて。自分は企業に勤めながら個人でも事業をやっている。注目しているのはITのスタートアップ。有名な人から下の人までつながっていて、出資しあったりしている。 今のテクノロジーを活用して、ファッションで食べていくために、アドバイスをお願いします。」 軍地さん 「DECODED fashionというおもしろいサイトがある。 何が一番ファッション業界に必要なのか、と考えている。このサイトの下部に『あなたの所属はなんですか』と書いてあって、3種類表示されている。 ファッション業界・IT・出資者の三つ。金とITとファッション。ファッションに必要なのはITと出資者だけ。センスさえあれば、つくったものがおもしろければ十分ビジネスになる時代。後はつながるかどうか。人と人をつなげるサイトが海外では発達していて、日本でもやるべきじゃないかと考えている。」 司会 「最後に、ファッションの未来に関心を持ってお集まりいただいたみなさんに向けて、一言ずつお願いします。」 軍地さん 「ファッションの未来のためには、業界的には変わらなければならない。変わる気になれば、ファッションの未来はすごく明るい。 私がファッションの仕事をしている理由は、服を着れば気持ちが変わるから。喪服を着れば喪服の気持ちになるし、ドレスを着ればシンデレラの気持ちになるし、 コスプレすれば初音ミクになれる。すごくダサかった子が一枚のワンピースで美人になるのを何度も見てきた。 ファッションはそういう人のためのものだ、と思った人にとっては明るい未来がある。 一方で、ファッションは流通だと思っている人にとっては厳しい時代。だから夢をみてほしい。 そして実現する力をつけてほしい。そのためにはハイスピードな時代にキャッチアップしていかなくちゃいけない。頑張ってください。」 千原さん 「若い人を見ていると、そこそこでいい、それなりに面白いことができればいい、それなりに収入があってそれなりに生きていければいいという考えを最初から持っている人がいる。 もっと頑張ったら面白いことできるじゃんと言っても、聞いてもらえなくて辛い。こういうところでたまに言えるけど、僕はせっかくやるなら一番上を目指してやってほしいと思う。 ファッションでもグラフィックデザインでも、一番有名になってやろうという気持ちで仕事をしてもらいたい。 それが価値を持つ。そういう気持ちでやっている人がなかなかいない。やるからには有名人になる、という考えを念頭に置いておけば道は開ける。 SNSでは一般人でもフォロワーが何十万人もいたりする。ああいう人たちは有名になりたい、面白いことをやりたい、年収1000万を超えたいと思っていて、パワーがある。 そういう人たちが集まった方が面白いことをできる。大きな目標を持って働いてください。」