業界で活躍する方々に、ファッションに関する様々な意見を聞くインタビュー
中川 悠介
1981年、東京都生まれ。東洋大学経営学部在学中に、先輩とイベント運営会社を設立。卒業後もその事業を継続し、2002年から月曜のクラブを借り切った「美容師ナイト」などを開催。
07年にアソビシステムを設立。“青文字系カルチャー”の生みの親。会社を構える原宿でお気に入りの場所は隠田神社。
「原宿は、学生時代から慣れ親しんできた大好きな街。当時はギャルブームで、渋谷が同じようなファッションで溢れていたのに対し、原宿はもっと自由で個性的。〝何かを自由につくり出していく街〞という印象が強かったですね」
中川氏は、アソビシステムを設立する前から、原宿を拠点に服飾系の学生を集めたファッションショーや、火曜が休みとなる美容師に向けた月曜夜のイベント「美容師ナイト」などを手がけてきた。
アソビシステムは、得意とするイベントの企画・運営を足がかりに、自社サイトの運営、タレントマネージメント、飲食店やアパレルビジネス、日本のポップカルチャーを世界に発信する「もしもしにっぽんプロジェクト」の運営と、事業を多角的に拡大し、成長してきた。
「事業のコアは決めていませんが、要となっているのは人。エンターテインメント業界は究極の人ビ
ジネス。ですから、常に〝人〞を主軸にしています」
頭にあるのは、ブームをつくることよりも、〝カルチャーを創る〞こと。
身の丈に合った〝ビジネスのサイズ感〞を意識しながら、自分たちができること、いいと思うことを手がけていく――その信念は、創業当時から変わらない。
「ブームは一過性ですが、カルチャーはずっとそこにあるもの。世間の人たちは、目の前にないものには反応しないので、〝お茶の間のちょっと上〞にあるものを見せることを意識しています。それがメディアに取り上げられ、広まっていく。日本のポップカルチャーも、そんなふうにして世界に広まっていきました。きゃりーぱみゅぱみゅにしても、新しさに目を付けたわけではありません。本人も含めて、自分たちがいいと思ったことを貫いた結果として、多くの人たちに支持されたと思っています」
アソビシステムの特徴は、業界の垣根を越えてビジネスを展開していること。
「日本は、自動車業界、ファッション業界など、業界が縦割りの社会。そうした縦割りの業界を、例えばイベントなどの横軸で貫いていく。それが私たちならではの特徴だと考えています」
昔は新聞、週刊誌、テレビが主な情報源だったが、現代はニュースサイトから個人のSNSまで、多種多様になっている。
「あらゆる情報がオープンになり、好きなことを好きでいい自由さが出てきた。個人からの発信でも、認めてもらえる時代になっています。SNSのインフルエンサーが支持されているのも、それが理由でしょうね」
消費者は、自分がいいと思うものを自由に買える。そんな今を、「楽しい時代」と評する。
「今や、誰でもゼロからすぐにイチを創り出せる時代です。SNSで発信し、ECで販売すれば、いきなりデザイナーにだってなれる。みんなに可能性が広がっているはず」
アソビシステムは、所属モデルの瀬戸あゆみがデザインするブランド「Aymmy in the battygirls」をはじめ、アパレル企業のPR企画など、様々なファッションビジネスも展開する。
「撤退や倒産などの暗いニュースが続くアパレル業界ですが、この世から洋服がなくなることはあり得ない。新ブランドも次々誕生しているので、そうネガティブにとらえなくていいと思います」
ただし、バブル期のように100万枚売って利益を出すビジネスは通用しない時代。
少量販売でも利益が生まれるような仕組みを考えていくべきだという。
「デザイン・生産・販売まで一貫で行うのではなく、他社と組むことにもメリットがある。いろいろな組み方を模索し、柔軟に連携していくことが大切です」
この9月には、約40万店舗が出店するEコマースプラットフォーム「BASE」との事業提携をスタート。これは、アソビシステムの所属タレントが、BASEの中から商品を発掘し、PRしていこうというもの。
コラボ商品の制作・販売や、ポップアップショップ展開なども行っていく予定だ。
14年には原宿に観光案内所「もしもしBOX」を開設。今後も海外を視野に、自分たちができることをやっていくという。
「ソニーやトヨタなどの技術力に始まり、アニメ、和食、ポップカルチャーなど、日本のクリエイティビティの高さは世界に誇るべきもの。今後も、企業や店舗、個々のアーティストたちとコラボしながら、その素晴らしさを世界に見せていくつもりです。日本のファンを世界中に増やしていくことで、その先にまた新しい何かが生まれることを期待しています」