ブランドを作り上げたメンバーが語るブランドへの思いとその成功の軌跡
アッシュ・ペー・フランス株式会社
〒107-0062
東京都港区南青山 5-7-17 小原流会館 6階
ファッション、インテリア、アートなど、生活と文化にかかわる事業を幅広く展開。小売部門は、ヨーロッパの服飾雑貨やアクセサリー、時代性やカルチャーを踏襲したファッション、インテリア、アートのセレクトショップ約90店舗を、パルコ、阪急、ルミネなどで展開。卸売部門は、世界中から厳選した様々なブランドを紹介・販売する。両部門を軸としたコンサルティング、展示会事業、アート支援などの事業も推進している。
1984年 東京・原宿にレディースファッション小売店「Lamp」開店
原宿プロジェクト有限会社(現アッシュ・ペー・フランス株式会社)設立
1989年 フランス人バイヤーを起用したバイヤーズショップを開発、パリ現地法人設立
2001年 ニューヨーク現地法人設立、合同展示会事業「rooms」開始
PR01.の活動本格化
(アタッシェ・ドゥ・プレス/コンサルティング)
2010年 デザイン・アート・プロダクトの合同展示会「BATOMA」開始
合同展示会とランウェイショーのファッションイベント
「roomsLINK」開始
1984年の創業以来、「創造的であるということ」「グローバルであるということ」「〝人が生きる〞ということ」を企業理念に掲げ、日本全国に約90店のセレクトショップを展開するアッシュ・ペー・フランス。世界中のブランドを発掘しながら、独自の世界観を築く同社にとって、バイヤーの力に委ねられるものは大きい。約20年のキャリアによって培われた経験則と、確かな
審美眼でヨーロッパ部門のバイヤーを務める町田小都美は、年に4、5回、パリ、ミラノ、ロンドンへ出向き、クリエイターとの信頼関係を丁寧に深めながら、バイイングを行っている。アッシュ・ペー・フランスの核をなすバイヤーとしてのこだわりとは、いったいどのようものなのだろうか。
「私が入社した当時は、ヨーロッパ、特にパリは日本人にとって憧れの国。〝made in France〞というだけで一目置かれる時代でした。しかし、グローバル化が進む今では、〝パリが特別〞という感覚は薄まりました。世界中の才能あふれるクリエイターが持つ感性を損なうことなく、その思いをいかに最大限伝えていけるか――その姿勢を大切にしています」
そして、ビジネス的な成功だけに固執せず、クリエイターがベストな状態で制作を続けられるよう、パートナーとしての努力や誠意も一切おしまない。
「日本での販路が生まれることで、クリエイターがよりよいものづくりのための環境を得る。その循環を後押しする役割も私たちは担っています。この努力が、必ずお客さまの満足にもつながっていくと信じています。世界のファッションは常に動いているので、ヨーロッパの伝統をリスペクトしながらも、新しいクリエイターがつくる、感度の高い〝今〞のアクセサリーを伝えていきたいですね」
ヨーロッパのジュエリーに特化したセレクトショップブランド「アッシュ・ペー・フランス ビジュー」。その立ち上げからかかわってきたディレクターの國吉祐子は、クリエイターの信頼を集めてきた町田の姿を見て育ったスタッフの一人。國吉もクリエイターとのつながりを大事にしながら、論理的な思考としなやかな視点でブランドの未来を見据えている。
「2002年に入社した当時、日本市場にはトレンド・アクセサリーと従来の宝飾の隙間がありませんでした。そこにファッションジュエリーという新しいカテゴリーを初めてつくったのが、アッシュ・ペー・フランス ビジューだと思います。ヨーロッパのジュエリーを文化として提案していくこと。また、常に日本市場に新たなトレンドを仕掛けていくという姿勢で、ショップのブランディングに取り組んできました」
パイオニアとしての苦労は当然多かったが、クリエイターとのかかわりを重ねていきながら、ブランディング・コンセプトを際立たせていった。ファッションビジネスには、春夏、秋冬といったシーズン性、トレンドの瞬発力がある。そういった流行に終わりがあるものだとすると、〝もの〞をつくり続けるクリエイターの活動に終わりはない。そこが魅力だと國吉は語る。
「ライフワークとしてクリエイションを続けるクリエイターの姿に触れると、長く愛されていく継続的なブランドづくりがイメージできるんです。そして、日本人にも響く繊細で魅力的な製品を、彼らの精神性を含めてお届けするためには、店舗づくり、サービス、スタッフのおもてなしに至るまで、しっかりとブランディングしていくことが、とても重要なのです」
今、最も力を注いでいるブライダル事業は、國吉が一からコンセプトを練り、立ち上げたもの。6名のクリエイターとコラボレーションしたブライダルリングをメインに、ドレスまでのトータルコーディネートが楽しめる「ライフスタイルウェディング」を提案し、人気を博している。
「常に新しい発想で、一生使い続けていただけるようなストーリー性のある結婚指輪やエンゲージリングをお届けしていきたい。そのためにはデザインだけではなく、宝石としての価値を兼ね備えていることが、これからさらに重要視されると思っています」
これまでヨーロッパブランドを中心に展開してきたアッシュ・ペー・フランスにとって、日本のクリエイションに特化した「ドラマ アッシュ・ペー・フランス」と「シネマ アッシュ・ペー・フランス」は、新たな試みのひとつ。立ち上げスタッフであり、現在、ディレクター兼バイヤーを務める神谷温子も、最初はヨーロッパ部門のバイヤーとして経験を積んだ。
「主張の強いヨーロッパ作家のデザインを長く見てきていたので、日本人の繊細な感覚を見極められるようになるまでに時間がかかりました」
12年からは、アッシュ・ペー・フランスが開催する国際合同展示会「rooms」のジュエリーエリアのディレクションなど、世界規模の市場活性化と拡大を目指した精力的な活動も行う。また、スタートから7年目を迎えた「ドラマアッシュ・ペー・フランス」の次なるステージへの準備も着実に進めている。ショップブランドのテーマである〝インキュベーション・プロジェクト〞の一環として、この6月にはアコヤパールとの新しい取り組みがスタートする。
「このパールは、宝飾品として日本が世界に誇る素晴らしい素材。歴史に裏付けされた確かな技術で一粒一粒丁寧に品質を管理している職人たちの思いが伝わるよう、力を入れていきたいプロジェクトです。養殖場のある伊勢にも頻繁に足を運んでいます。ただ、ファッション的に難しい素材でもあるので、新鮮なクリエイションにこだわって、提案していければと思っています。そして、品質の高いパールを一人でも多くの20代、30代の女性に身に着けていただき、素材自体の魅力に触れてもらいたいですね」
クリエイターの感性や才能、そして、人の価値観や生き方を尊重する〝人が生きる〞という企業理念は、クリエイターと共に歩み続ける宣言であり、また、スタッフ自身がさらなる成長を遂げるための共通認識でもある。これからもクリエイターの感性を大切にしながら、私たちの心を揺さぶる新しい世界観を魅せてくれるのだろう。 本文中敬称略
入社間もない頃に出会ったジュエリーデザイナーのセルジュ・トラヴァルは、町田にとって思い入れのあるクリエイターの一人。「爪が黒くなったクリエイターの手と、ものづくりに没頭する姿が、今でも眼に焼き付いています。当時、ぜひ日本に紹介したいと思いました」。彼との出会いがバイヤーとしての方向性を定めるきっかけにもなった。
H.P.FRANCE
エグゼクティブバイヤー
1994年、入社。PR担当を5年間務めた後、バイヤー業務を本格的にスタート。PR時代に培った“クリエイターの個性や魅力を顧客に伝えていく仕事”にこだわる。年間4、5回、パリ、ロンドン、ミラノなどヨーロッパ出張へ出向き、アッシュ・ペー・フランスの中でも、ヨーロッパ商材を扱うセレクトショップ「goldie H.P.FRANCE」「H.P.FRANCE BIJOUX」(國吉も担当)、「Theatre H.P.FRANCE」とH.P.FRANCE SHO WROOM(卸売)のバイイングを行っている。
毎年3月末に開催する桜のイベントで、海外のクリエイターに桜をコンセプトにした限定品の制作を依頼し、販売する。「ショップにも桜の花を生けて、お客さまに春を楽しんでいただきます。日本の桜は世界的にも有名ですから、海外のクリエイターも制作を楽しんでくれているんですよ。服は『春だから春物を』という購買行動がありますが、ジュエリーにはそういったシーズン性がありません。桜のイベントのように日本人らしい情緒を取り込んだアプローチを展開させることで、手に取っていただく行動につなげる工夫をしています」
H.P.FRANCE BIJOUX事業部
ディレクター 兼 企画室 室長
2002年、ジュエリーに特化したセレクトで展開する「H.P.FRANCE BIJOUX」のオープニングスタッフとして入社。以来、冷静な市場分析力と女性らしい情緒的な感性をもって、高感度な女性に支持されるブランディングを行い、“ファッションジュエリー”というカテゴリーを根付かせる。08年には、ブライダル事業を本格的にスタート。クリエイターブライダルコレクションで台頭し、ブライダルリングに新しい常識を起こす。企業創立30周年を迎えた14年のクリスマスシーズンには、ショップブランドを横断した新プロジェクト「LOVE & GIFT」を統括。人事教育といった全社的な仕事でも活躍。
日本人クリエイターには、デザイン・制作から販促まで、すべて自分で行う人が多く、特に営業力の有無で売り上げが決まりがち。「期間限定のショップの引き合いはあっても、本格的なバイイングには、つながりづらいのが現状です。roomsの主催者側としても、今後、国内だけではなく、日本のクリエイションの市場を世界に拡大させていくことが、私の使命だと思っています」
drama H.P.FRANCE事業部
ディレクター 兼 バイヤー
2003年、入社。08年、日本のクリエイターのジュエリーブランドに特化したセレクトショップ「drama H.P.FRANCE」を立ち上げる。現在、国内で4店舗を展開。13年より、ファッションとデザインの合同展示会「rooms」のジュエリーエリアのディレクターを担当。14年、日本のジュエリーの活性化を目指し、ニューヨークと台北で合同展示会「DRAMA JEWELRY JAPAN TOKYO TRADESHOW」を開催し、ニューヨークにショールームを設置。同年、福岡、大阪に国産ジュエリーを中心とした、ファッション雑貨、アートなどを揃えた新業態「CINEMA H.P.FRANCE」をオープン。