ブランドを作り上げたメンバーが語るブランドへの思いとその成功の軌跡
GALLARDAGALANTE
設立16年目を迎えたセレクトショップ「GALLARDAGALANTE(ガリャルダガランテ)」。これに合わせて新たに5ブランドを立ち上げるとともに、「ガリャルダガランテ」のコンセプトを再定義した。新たなコンセプトを実体化する4人のメンバーに話を聞いた。
株式会社パルが展開する、30~40代の大人の女性をターゲットにしたセレクトショップ。2000年、ディアモール大阪に1号店をオープン。「GALLARDAGALANTE(ガリャルダガランテ)」とは「コケティッシュでいて洗練された、奔放でいて上品な」というスペイン語の造語。16年、「SPICE OF LIFE」をコンセプトにリブランドを図った
セレクトショップ「GALLARDAGALANTE(ガリャルダガランテ)」が設立16年目を迎えた。これに合わせて新たに5つのラインを打ち出すとともに、ルミネ新宿店のショップをリニューアルして新たな旗艦店とするなど「リブランド」戦略を進めている。
ブランドマネジャーの守屋初音は同ブランドを、「常に変化を続けてきたブランド」と評する。
新たな5ラインは、トレンドをより強く意識した「GALLARDAGALANTE NAVY」、モードのエッセンスをプラスし「myporter」など。それぞれガリャルダガランテの"らしさ"にしっかり軸を置きながら、そのテイストを拡大するという位置づけだ。また同時に、オリジナルラインのガリャルダガランテもコンセプトが見直された。新しいブランドコンセプトは「SPICE OF LIFE」。上質と洗練を知る大人の女性が、デイリーに着こなせる服。守屋は言う。
「ガリャルダガランテの根底にあるものを守り、従来のお客さまの期待に応えながら、私たちが新たに提案できる価値はなんだろうか。そう考えた時に、さりげない"ふつう"を最高の"ふつう"にすることだと。私たちの服はそのためのスパイスなのです」(守屋)
ガリャルダガランテを統括するのは、このブランドを立ち上げた山崎修プロデューサー。ブランドマネジャー以下、デザイナー、バイヤー、店長らが、彼のディレクションを共有、具体化してガリャルダガランテの世界観に落とし込む。かといって「山崎が100%ガチガチにディレクションしているわけではない」とバイヤーの杉江亜希子。むしろ、各ポジションからの自由な発想が望まれている。
「山崎からのディレクションがあるにしても、それをどう表現するかは、私たちの個性に委ねられている。それぞれのポジションで、山崎が打ってきたボールをレシーブするみたいな感じで、肉付けしていくのが私たちのやり方です」(守屋)
だが当然ながら"らしさ"の的を外すレシーブではブランド運営に差し障る。とりわけリブランド直後は、メンバーのブランド観がブレるリスクが懸念された。そこで5つのキーワードによりガリャルダガランテをよりわかりやすく伝えるコンセプトブックを新たに制作。タイトルには「Intelligence」「Atmosphere」「Timeless」「Elegant」「Pure」といったキーワードが並ぶ。
「これさえ共有し、守ることができていれば、あとは自由に振る舞っていい、というルールブックみたいなもの。私たちの仕事を縛るものではありません」(杉江)
「逆にいうと具体的にこれが正解、と示すものもない。なのでブランド観も各人やっぱり少しずつ違うんです。時には、ふわっとした言葉を商品に落とし込む苦労もある。でもだからこそものづくりの自由が保たれているし、ブランド"らしさ"をある程度守りながら、ブランドが変化する余地も生まれるのだと思います」(守屋)
この4人が口を揃えるのは「自分が動けるブランド」であるということ。だが各人それぞれのポジションで果たすべき役割は明確だ。
ルミネ新宿店店長の小澤紗矢は「ブランドらしさとお客さまが求めることのすり合わせ」だと語る。
「ここ数年、シンプルかつベーシックなお洋服が多くなったことで、ほかのブランドとは異なる付加価値をつけた接客が大切になってきていると感じます。お客さまのオン・オフの着こなしをうかがいながら、ライフスタイルに合ったスタイリングを提案していきたい」
従来からガリャルダガランテはマーケットインの手法を掲げ「本部と店舗との距離の近さが強み」「現場の意見に合わせて服を調整する」と謳ってきたブランドだ。本部勤務のメンバーも月に数回店頭に立つ機会を持ち、生の顧客ニーズを業務にフィードバックさせる。
「その点では、お客さまの声を取りこぼさず本部に上げていくことが、各店舗の一番の役割かもしれません。特に旗艦店である新宿店は、客層も品揃えも一番広い。しかも、店長の一存で接客もVMDもある程度変えられる権限が与えられているので、お客さまの反応をつぶさにキャッチできるのです」(小澤)
デザイナーの岩崎理恵は、オリジナル商品の企画から生地選び、生産管理まで一手に引き受ける。全アイテムを手がけるため、ニットの制作に布帛に使用するテクニックを持ち込んだりと、クリエイションの自由度も高い環境だ。だが絶対的なルールがないなかでは、「品質もデザインも新しさも、すべてが自分基準ともいえる」と岩崎。その基準づくりに接客経験が役に立つ。
「長い丈のスカートが可愛いと思っていても、実際にお客さまが求めている丈と違ったり。自分が思っている以上にお客さまはデイリーに着る服としての"リアリティ"を求めている。店頭にいるからこそ気づけることが多いですね」(岩崎)
こうした異なるポジションにいるメンバーの意見をすり合わせるのが、企画会議の場。熱い議論に意見が割れることも多々あるが、岩崎によれば「普段から市場を意識している私たちのなかでも、一番先を見据えているのはバイヤーの目です。バイヤーの意見を聞くと企画に新しいセンスが加わる」とのこと。そのバイヤーである杉江も、その役割を自認している。
「バイヤーという仕事がら、ディレクターの山崎と時間を共にすることも多いですし、新しいもの、新しいクリエイターに日々出会います。各シーズン、走り出すのが一番早いのがバイヤーでもある。世間の潮流がどこにあって、そのなかでガリャルダガランテがどんな立ち位置であるべきか、常に提言できる存在でありたいと思っています」(杉江)
守屋は「私の仕事は、ブランドの舵取り。自由に仕事をしているバイヤー、デザイナー、店長たちの調整をとることですね」と笑う。
「各メンバーが、今やっていることにそれぞれ満足している状態が一番。意見を調整するコツというものもなくて、必要なのは、単純に会話の量なのかなと思っています。最終的にジャッジを私や山崎が下すにしても、それまではとことん話し合って、自分たちが思うガリャルダガラン
テの落としどころを探す。そんな日々です」(守屋)
変化を続けたガリャルダガランテの16年間。守屋に聞けば「唯一変わらないのはディレクターの山崎の感性だけ」だという。だがそこにかかわるチームの面々が変わり、トレンドが変わり、ブランドの表現手法も変わった。次なる変化は何によってもたらされるのだろう?
「リブランドしたばかりの今は、この新しい価値をお客さまにお伝えすることが第一の課題。でもチームも新しくなったばかりで、組織として熟練されているとはいえません。いずれ私たちのほうから山崎に対して提案できるぐらいの力を身につけたら、1つステージが上がるかも。そう期待しています」(守屋)
予算管理、出退店管理、人事管理と業務は多岐にわたるが、肝となるのはやはりブランドの舵取り。
「私はチームのなかでは新参者です。でも、これまでブランドが培ってきた価値にもっともっと共感して、よりよいかたちでお客さまに伝えていきたい。ブランドコンセプトが抽象的である分、丁寧に、時間をかけても伝えていきたいと思っています」
ブランドマネジャー
大学卒業後、派遣社員として店舗スタッフに。社員となり、当時の旗艦店だった表参道店で店長を務める。2015年8月、ブランドマネジャーに就任した。「一番嬉しいのは自分たちがつくったものが店舗スタッフやお客さまに響いた時。お客さまにお買い上げいただけるのが一番ですし、店舗スタッフが本部一押しのスタイリングをお店で着てくれたりすると『ありがとう』と言いたくなります」
「大人の女性がそれ一枚着るだけで素敵に見えるシルエットがガリャルダガランテの“らしさ”」と岩崎。
ベーシックなデザインのなかにも、ステッチの入り方や襟ぐりのカーブの描き方に岩崎のセンスが表れている。「ベーシックには“ごまかし
がきかない”という側面もあります。パターンや素材においても上質を心がけなければ」
デザイナー
5年前、コレクションブランドでのデザイナーからガリャルダガランテのデザイナーに転身。デザイン画に始まり生地選び、工場への発注と生産管理的な業務も担う。「個人的にはサンプルが上がってきて、その袋を開ける瞬間が一番ワクワクします。『やっぱりこのパターン、この生地でよかった』って。信頼してお願いしている工場やパタンナーさんにも感謝の気持ちが湧いてきます」
ブランドコンセプトに従いアイテムを買いつける仕事。
「新しいクリエイターに会い、彼らの思いを直接聞く仕事でもあります」。世間ではまだ知られていない新しい価値をいち早くキャッチできるポジションだ。「常にアンテナを張り、多くのものを見て感じながら、このブランドの高いファッション感度を牽引していきたい」
バイヤー
大学時代からラフォーレ原宿店、大宮店で店舗スタッフを経験。パル入社後は横浜ルミネ店の店長を経て、本部勤務。別ブランドで企画、バイヤーディレクターを経験し、2015年からガリャルダガランテのバイヤーに。現在はメンズスタイリストの小沢宏氏とコラボし「The Keys to the Closet」のディレクターも務めている
ブランドがやりたいことを顧客にわかりやすく伝えながら、顧客が求めるものを吸い上げ本部に提言する。これが店舗の役割。
「なかでもルミネ新宿店は客層が多様で一日のなかでも売れ方が変わります。それに合わせてプレゼンテーションも頻繁に変える。その結果を守屋に伝えることで、お客さまが求める品揃えにつなげていきます」
ルミネ新宿店 店長
パル入社後、丸の内店、池袋店、新宿店で店舗スタッフを経験。1年前に新宿店の店長に。「リニューアルによって店舗が広くなり、高級感が出て、ファッション感度が高いお客さまが増えた印象です。リブランドについてもおおむね好評で、『新鮮だ』と言っていただける。以前からのガリャルダガランテのエッセンスも残していることで、新鮮さばかりでなく安心感もあるのだと思います」