ファッション業界の最前線で活躍するトップクリエイターの方々にインタビュー
19歳でデビューして56年目、東京で110回ものコレクションを続けてきましたが、やめたいと思ったことは一度もありません。ショーが終わると、いつも「ああしたかった」「次はこうしたい」という思いが湧いてきます。
服づくりで意識しているのは、「こうしたい」という自分の思いに集中して取り組み、決してあきらめないこと。完成するまで妥協せずしつこく考えて、第三者的な目で何度も見返すようにしています。母も祖母も、それぞれ一所懸命仕事に取り組んでいましたが、
私の根底には、二人のそんな姿が焼き付いているのだと思います。
年齢を重ねてもセンスを進化させる秘訣は、自分自身がファッションを楽しむこと。お客さまからよく、「この洋服でどんなコーディネートができるの?」と尋ねられます。そこでコーディネートの参考になればという思いから、毎日自分で着た服のコーディネート
を撮影して、全国の店舗に送っています。これは10年以上前から続けている日課になっています。夫にすすめられ、昨年からはインスタグラムも始めました。
デザイナー冥利に尽きるのは、「この服を着ると、すごく幸せな気分になれる」という言葉をお客さまからいただく時。母娘2代で着てくださる方も多くて、先日、お母さまが結婚式のお色直しにお召しになったドレスを、お嬢さまの卒業パーティ用にリフォームし
ました。「ここまで大切にしてくださっていたのね」と感無量でした。
20代の時は自分が恵まれていることに気づかず、30代になってようやく世間がわかってきて、40代で全力を出し切ろうと思っていましたが、実際に40代になってみるとまだまだ。50代になってようやくエネルギーが充実し、いろんなバランスがとれて、自分でも「い
いな」と思えるようになりました。60代は孫ができて元気になりましたし、70代の今は、家族や友人の子供たちと過ごす時間が楽しみです。
私の頭にあるのは、いつも次のコレクションのこと。今は、秋冬のコレクションのことで頭がいっぱいです。「今度はこんな生地をつくりたい」など、毎回何か新しいことに挑戦していますし、これからも服づくりをとおして、自分も知らなかったような可能性を追究していきたいと思っています。
トリイユキ鳥居ユキ
1943年 東京都に一人っ子として生まれる
1958年 日本女子大学付属中学校から文化学院美術科に3年飛び級で特別入学
1961年 文化学院を卒業。伊藤すま子デザイン研究所で、カッティングとデザイン画を学ぶ
1962年 母・君子のショーで作品を発表し、デザイナーとしてデビュー
1972年 劇団四季の舞台「フィガロの結婚」の衣装70点をデザイン
1975年 パリ・コレクションに初参加(~2008年)
1985年 パリのギャラリー・ヴィヴィエンヌにブティックをオープン
著書「きもの、着ましょ。」(文化出版局)を出版
1994年 メンズライン「ユキトリヰ オム」を発表(~200年)
2005年 パリ・コレクション30周年を記念し、国立代々木競技場第二体育館でショーを開催
2008年・2010年 上海ファッションウィークに招聘デザイナーとして参加
2011年 デザイナー生活50周年。10月に100回目コレクションを発表
2014年 著書「YUKI TORII-STYLE BOOK」(朝日新聞出版)を出版
AWARD HISTORY
1976年 第20回日本ファッション・エディターズ・クラブ賞
1988年 第32回日本ファッション・エディターズ・クラブ賞
1995年 第13回毎日ファッション大賞受賞
第38回日本ファッション・エディターズ・クラブ賞話題賞
2005年 第23回毎日ファッション大賞特別賞