ファッション業界の最前線で活躍するトップクリエイターの方々にインタビュー
パリコレの一番の魅力は、世界中のバイヤーやジャーナリストたちに見てもらえること。つまりビジネスチャンスの多さです。このチャンスをつかむには正式にコレクションに組み込んでもらう必要がある。最初から自分たちは公式スケジュールでやりたいとパリコレ協会に打診したところ、「初参加のブランドは非公式スケジュールで3回ぐらいやって、人が集まるようになったら公式スケジュールでやる権利をもらうんだ」と。でも彼らは「ブランド次第だ」とも言った。パリ進出を決めてから本番まで半年。タイトなスケジュールでしたが、過去12年分の自分たちの「ベスト盤」をトランクに詰めて、アンリアレイジと共に世界で戦ってくれるセールスエージェントとプレスエージェントを見つけるためにパリのショールームとPR会社を回りました。言語や文化が違ってもファッション好きなら何か感じてくれるだろうと信じて。どちらも5、6社回りましたが、熱意をもって「ぜひ扱いたい」と言ってくれた会社と組むことができ、海外でのブランドとしての基礎を固めました。その上でもう一度、パリコレ協会に会いに行くと、最終的には「すごく面白いし、今のパリにはないタイプだ」と評価してもらうことができ、公式スケジュールの参加を手に入れることができました。
僕たちは、初のパリコレをしっかり丁寧にブランドを伝える場にしたいと思っていました。ショーの15分間だけで、すべてを判断されるような〝賭け〞はしたくなかった。そこで作戦を練りました。ショーに合わせて、パリの有力なショップ「レクレルール」で展覧会を開催し、東京で活動してきた12年分の作品を並べる。そして、ショー初日の夜はそこでパーティを開き、詳細な資料で「日常と非日常」を様々な手法で表現しているブランドであるということをしっかりプレゼンテーション。そうやって、ブランドを深く理解してもらえるようにしました。
パリコレ初回のテーマは「SHADOW(邦題:光)」。白い服が光に当たると黒くなり、手で光を遮ると服に手の跡が残る、という演出をしました。これもある意味、東京でやってきた10年の集大成。実は初めて参加した東京コレクションも、「影」の表現を試みた作品だったんです。手法は変わっても表現したいことはずっと同じ。それぐらい特別なテーマで臨んだショーの後に、拍手を聞いたときは本当に感動しました。
もりながくにひこ森永邦彦
1980年 東京都国立市に生まれる
1998年 代々木ゼミナールにて英語講師・西谷昇二氏の授業で神田恵介を知る
1999年 神田と同じ早稲田大学社会科学部に入学。
京王井の頭線内でのファッションショーに衝撃を受け、服づくりを始める
2000年 ANREALAGEを開始
2002年 青山円形劇場でファッションショーを行う
2003年 早稲田大学社会科学部、バンタン研究所を卒業。
同年、ANREALAGEを会社化する
2005年 東京コレクションに参加
2011年 東京原宿に直営店をオープン
2014年 2015 S/S パリコレクションに進出。TBS番組『情熱大陸』出演
受賞歴
2005年 ニューヨークの新人デザイナーコンテスト
「GEN ART 2005」でアバンギャルド大賞を受賞
2011年 第29回毎日ファッション大賞新人賞・資生堂奨励賞受賞