ファッション業界の最前線で活躍するトップクリエイターの方々にインタビュー
文化服装学院に入学して改めてわかったのは、自分は洋服づくりが苦手だということ(笑)。部分縫いの課題も満足に提出できないし、先生が教えてくれることも理解できない。おまけに旅行で海外に出かけると1、2カ月は帰ってこないわけで、すっかり劣等生です。危うく除籍になるところでしたが、親しい先生に頼み込んで留年で勘弁してもらいました。
ただ、やめようとは一度も思いませんでした。学院には在学中に賞を取るような優秀な学生もいましたけど、まったく芽の出ない自分と彼らの差は、ほんの数年。「10年後に、満足のいく服がつくれるようになっていればいいか」くらいの感覚で、あまり気にせずやっていました。
服づくりは苦手でも、学院は好きな場所でした。毎年、文化祭があって、ファッションショーが開催されます。基本的に学生は、1人1体ずつショーで発表する服をつくるのですが、ショーのフィナーレの演出上、たくさんの服を一気に出したいと思ったんですよ。ショー委員会のデザイン部門のまとめ役を任された年、自分のデザイン画をもとに、ほかの学生に縫ってもらい、十数体を発表しました。
この経験から、自分で縫わなくても服はつくれるということがわかりました(笑)。自分にはできないことでも、それが得意な仲間の力を借りれば実現できる。今思えば、組織づくりに適した思考を持っていたのかもしれません。苦手なことは仲間に任せて、自分が得意なことを精一杯やる。今も僕は、組織の一要素でいいと自覚しているんです。何かできないことがあっても、引け目を感じることは、ほとんどありません。
みながわ あきら皆川 明
1967年 東京都大田区に生まれる
1987年 文化服装学院服飾専門課程Ⅱ部服装科に入学
1989年 文化服装学院を卒業後、大西和子のメーカー「P・J・C」などに勤務
1995年 自身のファッションブランド「minä(ミナ)」を設立。東京・八王子にアトリエを構える
1999年 アトリエを阿佐ヶ谷に移す
2000年 アトリエを東京・白金台に移し、初の直営店をオープン
2003年 ブランド名を「minä perhonen(ミナ ペルホネン)」に改名。フリッツ・ハンセン社とのコラボレーションで、
「minä perhonen」の生地をまとった家具、エッグチェア、スワンチェア、セブンチェアを発表
2004年 パリ・コレクションに進出
2006年 デンマークのテキスタイルメーカー「KVADRAT(クヴァドラ)」より、自身がデザインする生地が発売される
2007年 京都に2店舗めとなる直営店をオープン
2012年 東京スカイツリー®のユニフォームデザインを手がける
2014年 経年変化を楽しめるようデザインされたインテリアファブリック「dop」を発表
受賞歴
2006年 「毎日ファッション大賞」大賞受賞