“モノづくり“という共通のフィールドで活躍する異業種クリエイターのインタビュー
メイス・ニューフェルド
1928年7月13日、アメリカ、ニューヨーク州、ニューヨーク生まれ。ハリウッドで最も成功し尊敬されているプロデューサーの一人。才能ある人材を見抜く鋭い眼識と、小説を映画化して大ヒットに導く能力を誇り、ケヴィン・コスナーやアレック・ボールドウィンなどの大スター、リチャード・ドナー、ロジャー・ドナルドソン、フィリップ・ノイス、ジョン・マクティアナンらの監督に成功へのチャンスを与えた。華々しい成功を収めたシリーズを二つも手掛けているという点でも異例の存在。一つは『オーメン』3部作──『オーメン』(76)、『オーメン2/ダミアン』(78)、『オーメン/最後の闘争』(81)。もう一つは、作家トム・クランシーによる“ジャック・ライアン”シリーズを映画化して大ヒットした4作品──
『レッド・オクトーバーを追え!』(90)、『パトリオット・ゲーム』(92)、『今そこにある危機』(94)、『トータル・フィアーズ』(02)である。1976年、ハーヴェイ・バーンハードと組んで『オーメン』を製作する。グレゴリー・ペック主演、リチャード・ドナー監督で世界的大ヒットを記録、シリーズ化されて、ニューフェルドの映画製作者としてのキャリアを軌道に乗せる原動力となる。1989年には、ニュー・ワールド・エンターテインメントの元社長ロバート・G・レーメと組んで、ニューフェルド/レーメ・プロダクションズを設立、パラマウント ピクチャーズと独占契約を結ぶ。その後、ダニー・グローヴァー主演の『イントルーダー/怒りの翼』(90)、『スーパー・タッチダウン』(91)、エディ・マーフィ主演の『ビバリーヒルズ・コップ3』(94)など、製作する映画が次々にヒットを記録する。数々の受賞歴を誇り、ショーウェストでは“プロデューサー・オブ・ザ・イヤー”賞、パーム・スプリングス国際映画祭では映画製作に対する生涯功労賞、さらにクリストファー賞、ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞、放送映画批評家協会賞などの栄誉に輝いている。また、ハリウッド・ウォーク・オブ・フェイムの権威ある星形プレートも授与されている。カメラマンとしての腕前は一流で、第2次世界大戦の帰還兵を撮影した「戦士の帰還」という作品は、1945年のピューリッツァー賞最終選考まで残り、ニューヨーク・ワールド・テレグラム=サン紙では年間最優秀写真に選出される。アメリカン・フィルム・インスティテュートの理事会の一員で、USCレイ・スターク・プロデューシング・プログラムの講師も務めている。原始美術の素晴らしいコレクションが自慢で、多発・計器飛行パイロット・ライセンスも持っている。10年以上にわたり、ホームレスの支援団体PATH(People Assisting the Homeless)の後援者で、2000年にPATHの賞を受賞している。慈善団体“ストップ・キャンサー”の熱心な支援者で、ビバリーヒルズ芸術委員会の一員でもある。最新作は、デンゼル・ワシントン主演の『The Equalizer』(14)
10代の頃から写真に興味があって、写真家としていろいろな活動をしていました。両親からは、「大学に入った後で職業を決めた方がいい」と言われていたので、大学時代からは写真以外のことも始めるようになりました。
今のような映画のプロデューサー業で、大きな転機になったのは1976年の『オーメン』ですね。映画に興味のある人は、みんな「ヒット作を生みたい!」という夢を持つと思うのですが、私の場合は最初に『オーメン』が大ヒットしました。そういう風に、これからもずっと、映画はすぐに作れるものだと思っていたら、次の映画を作るには何年もかかってしまいましたね。
トム・クランシーは綿密なリサーチをする方で、技術的な詳細、ディテールを盛り込む能力、その説明能力が非常に高かったので、世界で一番ベストセラーを出す作家になりましたし、興味深いストーリー、アイディアを生み出していったのだと思います。“ジャック・ライアン”シリーズにしても、クランシーの作品が幅広く支持されているのは、やはり物語の魅力ですね。
私には9人の孫がいて全員好きなことと同じような感じで、全ての作品に愛着があります。この作品が1番好き、というのは選べないですが、強いて言うなら“ジャック・ライアン”シリーズのスタートとなった『レッド・オクトーバーを追え!』は、やはり特別な存在です。
シリーズものを成功させる秘訣、というのを聞かれることもありますが、秘訣はないです(笑)。できるだけ私自身が魅力的だと思う題材を見つけて、シリーズ化できるなら、それは素晴らしいと思います。1本成功すれば次の映画は作りやすくなりますしね。できるだけ最高の俳優を起用し、監督も私が過去の仕事などで信頼している人を起用し、そして自分自身がベストを尽くす、ということだけです。
シリーズを通して、自分の関わり方も特に変わってはいなく、プロセスとしては同じです。まず、脚本を秀逸にするということ。それがなければいい映画はできませんので。次にキャスティングですね。ジャック・ライアン役はもちろん重要ですし。そして、スタジオに資金を出してもらうこと。それがないと映画はできません。
映画の公開前には、記者や批評家が何を言うか、観客がどう感じるのか…いつもプレッシャーを感じています。次の作品が同じように成功する保証はないわけで、その保証があれば私はもっと楽に仕事をしていると思います(笑)新しいプロジェクトも探さなくて良いですしね(笑)
今回の作品についても、シリーズ最後の作品から随分時間が経っていたので、オリジナルストーリーをやりたいという想いからスタートしました。ジャック・ライアンがどうやってCIAのエージェントになったのか、その歴史や、最初の仕事が分かれば、すごくおもしろいのでは、と考えました。そして、そのストーリーが成功すれば、また次が作りやすくなるという想いもありました。
今まで、ハリソン・フォード、ベン・アフレックら豪華俳優陣が演じてきたジャック・ライアンを今回演じているのは、クリス・パインです。スクリーンで『スター・トレック イントゥ・ダークネス』を見ていて、とても印象的でしたし、彼のパフォーマンスは素晴らしかったですね。それ以外にも、彼の芝居を2本見て、総合的にジャック・ライアン役にぴったりだと思いました。もう、彼以上の人はいないと思わせるほどの完璧ぶりでしたよ。
劇中にはこだわりのシーンもたくさんありますが、中でも、ロシアの実業家チェレヴィン(ケネス・ブラナー)とライアンのフィアンセ、キャシー・ミューラー(キーラ・ナイトレイ)の食事のシーンはみどころの一つだと思います。そのシーンはカット割りも良いですし、キャシーがチェレヴィンとの会話で時間をもたせている間にライアンがオフィスに入って情報を得て、捕まらずに出ていくという場面の緊張感、緊迫感がとてもうまく表現されていると思います。
これから、映像制作やクリエイターを志す人に伝えたいのは、自分が情熱を持つことができる企画を探してください、ということです。その題材に自分が情熱を持っていれば、諦めないで追求して欲しいです。私自身のこれまでの仕事を振り返っても、大切にしてきたのは、やはり自分が、そのプロジェクト、作品を信じるということですね。提案が拒否されることもよくありますが、にこやかに対応し、そして再挑戦します。そうすると、いつかきっと自分の意見が通ります。その継続で、いつか自分の作りたい映画ができると思うので、それを信じて進んで欲しいですね。