私たちインター・ベルはファッション・アパレル業界で働きたい方と一緒に成長し、クライアントの価値創造への貢献と、働く方々の生涯価値向上を目的にしています。

また人の可能性は無限大だと信じています。今回我々が立ち上げたMEDIAは、さまざまな経験を経て今最前線で活躍している方をピック。インタビューを通して、この業界で活躍するうえでの参考になればと思います。

記念すべき第1回のインタビューのゲストは、株式会社無茶苦茶の代表を務める宇野景太さんです。宇野さんは、なんとインター・ベルに2015年に入社し、その後ご自身で起業されて活躍されています。茶会のプロデュースやライブパフォーマンス、アート作品の制作など、「茶の湯と現代アート」をテーマにした活動のプロデュースやアーティストマネジメントを手掛けています。今回は会社のこと、お仕事のことなどざっくばらんにお話を伺いました。

株式会社無茶苦茶代表 宇野景太さん

アパレル業界から「茶の湯」の道へ

――宇野さんは元々ファッションに興味があったのですよね。

宇野:大学では経営学を学んでいましたが、Wスクールで服飾系の専門学校にも通ったり、ファッションショーのスタッフのアルバイトをしたりしていました。そのまま就職もアパレル業界を志望し、入社しました。

――なぜアパレルから日本文化の世界に入られたのですか。

宇野:もともとファッションショーの現場でお世話になっていた先輩が華道家に転身したのがきっかけです。ある時声をかけてもらい、軽い気持ちで彼の生け花の現場を手伝いに行ったら、今までにないワクワクする感覚がありました。もっと生け花を知りたいと思うようになり、先輩の現場で見よう見まねで花を触りだしたところからどんどん生け花の世界にのめり込んでいきました。その後、華道を入り口に、茶人や陶芸家、書道家、和菓子作家など、周辺にある文化に精通する作家との出会いが現在の「茶の湯」というテーマに繋がります。

――どうして「茶の湯」だったのでしょうか。

宇野:「茶の湯」は日本の総合芸術と呼ばれています。先ほど述べたような様々なジャンルの日本の芸術文化が集まっていて、一つでも魅力があるものが相互作用し合うことでさらに唯一無二の文化になるって、他の国にはない日本ならではの文化の重層さを感じました。

株式会社無茶苦茶の誕生

――社名が「無茶苦茶」というインパクトのある名前だなと思うのですが、なぜその名前にしたのでしょう。

宇野:まずは茶の湯にまつわる事業ということをわかりやすく表現したかったということと、「無茶苦茶する」と使われるような予定調和を越えたクリエイションをしていきたい想いを込めました。また共創する作家たちに「無茶振り」をすることで彼ら彼女らの表現者としての可能性を拡張したい意味もあります。

――なるほど。お話を聞いている限り、宇野さん自身も感性が豊かでデザイナーになれるくらい優秀な方なのかなと感じるのですが、あえて自分がプロデューサーになった理由はなにかあるのですか。

宇野:実は僕、就職後も並行してWebデザインの社会人学校に通っていました。大学時代経営学部に通いながらグラフィックデザインの学校に通ってみたりもして。一応自分でもデザインのスキルを身に付けようとチャレンジしましたが、やってみたらセンスがなかった…のが正直なところです(笑)そこで僕がもっと社会や人に貢献できることって何だろうと思ったときに、才能ある人たちをプロデュースすることが自分には向いているし楽しいし、周りの人も一緒にワイワイ楽しくできるんじゃないかと考え直しました。

――やってみたいで終わらずにいろいろなことに挑戦できることが素晴らしいですね。

ところで、最近の仕事終わりや休日の過ごし方を教えてください。

宇野:参考にならないんですけど休日っていう休日がなくて(笑)自分の中でスイッチ切れたら休む、みたいな。なんだろう、やることとしては美術館とか関連のイベントに行ったりとか、お花を生けたり、最近は映画を観に行ったりもします。

――とても豊かな時間の使い方をされていて尊敬します…!

宇野:ありがとうございます(笑)

伝統の継承とその先へ

――では、ここから会社にまつわる質問になります。ミッションであるRespect and Go beyond に込められた意味はなんですか。

宇野:今の会社に限らず基本的に仕事やものづくりをするうえで「敬意」は欠かせないものだと思っています。茶の湯は千利休をはじめ500年以上も前の先人たちから積み重ねられてきた伝統文化。まずは文化を生み出してきた偉人たちに敬意を示すというのがひとつです。その一方でただ敬意を表すだけでなく、僕らが次の伝統としての新たな1ページを刻もう、先人を越えていこうという思いを込めました。

――参画しているメンバーにはどんな人が集まっていますか。

宇野:多様なバックグラウンドを持った作家が多いのが特徴かもしれません。ファッションのスタイリストから生け花に転身したとか、スケートボーダーかつ陶芸家とか。ともすれば守りに入りがちな伝統文化という文脈の中での常識に囚われないアイデアや感性を持った人と仕事をするのはすごく楽しいですね。あとは社名の通りなにか無茶ぶりなことを振っても面白がってやってくれるアーティストが多いです。

――素敵な方が集まって作品を生み出しているのですね。宇野さんとアーティストさんの関わりは結構密接にあるのですか。

宇野:そうですね。基本的には僕から「一緒にやりませんか」と声をかけています。会社という建前はあるけど、僕的にはコミュニティというか一つのチームだと思っていて、それに共感してくれる人たちが集まって、共創しています。

――今までで印象に残っているお仕事を教えてください。

宇野:以前ABCマートさんとのお仕事でスニーカーVANSのPRをさせていただいた際に「ストリートカルチャー」と「お茶」のカルチャーを合わせて作品を作ったことです。スケートボードの板をくりぬいて茶杓を作ったり、デッキテープを使って掛け軸を作ったりしたのですけど、それは結構印象に残っていますね。かつ、自分が「こういうのをやってみたかったな」と思える仕事でした。

Photo by Yanase Wataru

――スケートボードと茶道、なかなかコラボすることのない2つですね。

宇野:そうですね、一見全く異なるカルチャーなんですが。スケートボードって老若男女問わずみんなが遊べるスポーツだし、お茶に関しても、お茶室の中では階級関係なくお茶を飲みながらコミュニケーションを楽しむカルチャーで、かけ離れた2つでありながら内包する価値の根幹というか大切なところは似ているなと思って企画しました。

――新しいアイデアで興味深いです。

宇野:僕たちはものを売っているわけではなくて、そういう精神性というか概念とか考え方を軸にしているので、そのエッセンスをうまくアウトプットができた仕事だなと思っています。

Photo by Hanako Kimura

――今まで「建築」「ファッション」など様々なジャンルとのコラボをされていますが、逆にこれから挑戦してみたいこと、こういう業界と仕事してみたいなというものがあれば教えてください。

宇野:例えば自主企画としていま、HIPHOPのアーティストと一緒に曲を作っています。
通常のお茶会は音の要素をなるべく削ぎ落とし静寂を楽しむことが1つの魅力でもありますが、逆に「茶の湯」というものを音で表現したらどうなるんだろうというところで、ジャンルを越境した作家たちとのものづくりに挑戦しています。
そういった僕らならではの視点で、普通だったら交わらないメンバーと一緒に作品を作っていくというのは、僕らの会社の醍醐味でもあるのでこれからもやっていきたいなと思っています。

――海外でのお仕事も視野に入れているのでしょうか。

宇野:そうですね、あまり日本というところにこだわらずに世界の中で日本の文化を発信するという視点を持ってやっていきたいです。

――会社としてのミッション、そして今の海外のお話に重なるのですが、やはり根幹にあるお仕事の目的としては日本文化を発信していきたいというところにあるのでしょうか。

宇野:ただ広めるだけではなくて、文化そのものの価値を知っていただくために僕らはどういうアプローチができるかということを根本に考えています。

――最後に、これから社会に出る学生に向けてメッセージがあれば教えてください。

宇野:よく若い人は時間があると言うけど僕はないと思っています。若いからこそやりたいと思ったことはどんどんやっていくべきだし、いろいろな経験を積むことで最終的に自分は結局何をしたいのかが明確になるので。
失敗の方が多くても、いろいろなことを挑戦、経験をしたほうが人生楽しいんじゃないかなと思いますね。人生何があるか分からないので、やりたいと思ったらチャレンジするとか、仲間を集めるとか、やってほしいなと思います。

――ありがとうございました。

日本の総合芸術「茶の湯」に新しい価値をもたらし、その文化的価値を発信していく無茶苦茶の活動に今後も目が離せません。様々なカルチャーとの融合によってこれからどんな作品で私たちを楽しませてくれるのか期待が膨らみます。
宇野さん、今回は貴重なお時間をありがとうございました。

〇宇野さんプロフィール
株式会社無茶苦茶代表。“Respect and Go Beyond”をミッションに日本の総合芸術としての「茶の湯」をテクノロジーやストリートカルチャーなど様々な領域と掛け合わせながら日本の精神性や価値観を提起する機会や場をつくり出すアートプロデュース&マネジメント事業を展開。茶会プロデュースや空間演出、パフォーマンスやプロダクト制作など茶の湯にまつわるアーティストと共に、現代的に翻訳した茶の湯文化を通したブランディングで日本文化の新たな可能性を追求している。

〇株式会社無茶苦茶 株式会社無茶苦茶 (mucha-kucha.co.jp)