今回筆者は、ソウルファッションウィークに2日間取材。会場のリアルな状況や、来場者の様子をお届けする。
会場は東大門デザインプラザ(DDP)
DDP(東大門デザインプラザ)は、韓国ソウルの東大門に位置する複合文化施設。「夢みて(Dream)、創って(Design)、楽しむ(Play)」というコンセプトのもと、アートホール、ミュージアム、デザインラボ、デザインマーケットの4つの主要エリアでできており、各種展示会やファッションショー、新製品の発表会、会議など様々な文化行事が行われている。
ソウルファッションウィークは例年ここでファッションショーを開催し、スポンサー関連のイベントも多数執り行っている。世界的に有名な建築家ザハ・ハディドによって設計された特徴的なフォルムと曲線を持つ、街の中でもインパクト大な建物だ。
韓国の強みといえばアイドル産業。世界的に大きな影響力を持つエンターテインメント分野であり、音楽業界だけでなくアパレル分野にもその市場を広げている。ソウルファッションウィークでもK-POPアイドルがショーに出席したりブランドの顔になったりと、その関わりは切っても切りはなせない。
ソウルファッションウィークの初日はアンバサダーを務める大人気アイドルNewjeansが登場。圧倒的なビジュアルで会場を盛り上げた。
ファッションウィークらしいシックな装いで、モノトーンで統一されたコーディネートが洗練された印象を与える。髪はあえてストレートで、クールなイメージでまとめあげた。
気になるブランドのルックをチェック!
今年のソウルファッションウィークには合計92ブランドが参加し、そのうち21ブランドがファッションショーを行った。ファッションショーはブランドからの招待者のみ、観覧が可能となっている。そのため筆者も実際のショーを見ることはできなかったが、気になるブランド3つを公式写真とともに紹介しようと思う。
HOLY NUMBER 7
1つ目に紹介するのはHOLY NUMBER 7。2017年のソウルコレクションでストリートカルチャーブランドとしてスタートした。ヒップホップカルチャーの時代に対する抵抗精神からインスピレーションを得て、自由でダイナミックなアヴァンギャルドなデザインを追求している。ストリートカルチャーの象徴的なシンボルと出会い、若者の成長と希望のメッセージをファッションを通じて伝えることで、ポジティブなストリートカルチャーブランドを目指している。
今季の新作は90年代のグランジファッションとY2Kをミックスしたようなルックが特徴的。ダメージデニムやボリュームのあるレザージャケット、ヒョウ柄やチェック柄のアイテムが目立っていた。スカートと長ズボンが一体になったY2Kスタイルのルック(写真中央)もいくつか見られる。
DOUCAN
DOUCANは、グラフィックアートワークを通じて、自然、光、年齢のオリエンタルファンタジーを再解釈するプレミアムデザイナーブランド。毎シーズン、デザイナーは独特で鮮やかな本物のプリントを融合させ、新鮮な感性を生み出している。
24FWのテーマは「HETEROTOPIA」。HETEROTOPIAとはユートピアの反対であり、想像の中に存在する理想的な世界を意味する。「HETEROTOPIA in DOUCAN collection」は、韓国の感性を現代の服に落とし込んでおり、全体的にクラシックとカジュアルを組み合わせて新たなスタイルを生み出している。
このブランドで注目したい部分はさまざまなテクスチャーの生地、そしてユニークなディテール。ファーやフリンジ、シースルーやベロアなど、デザインだけでなく細部まで楽しめる。
PARTsPARTs
最後に注目したいのがPARTsPARTs。なんとこのブランド、独自の溶接方法で100%リサイクル可能なモノマテリアル設計システムを運用している。トレンドの最先端でありながら、実用的で独創的なファッションシーンにインスピレーションを与え、創造するブランドだ。
今年のソウルファッションウィークのテーマは「持続可能なファッション」。環境に優しい素材やリサイクルに焦点を当てたプレゼンテーションや展示が行われる中で、PARTsPARTsはファッション業界におけるサステナビリティの重要性を示すショーとなった。
このPARTsPARTsは会場内で展示会も行っていたので紹介する。
デザイナーのIMSEONOC氏は、日本の文化的な服装を専攻して卒業し、ファッション界にデビューした。「韓国で輝く次世代リーダートップ100」に選ばれると、2011年にブランド「PARTsPARTs」を立ち上げ、サステナブルで無駄のない服を制作しはじめた。
PARTsPARTは、レゴブロックに似た方法でパターンを設計し、各パーツ(PART)が完全に収まるようにすることで、生地の無駄を最小限に抑えている。
IMSEONOC氏は、「本質に忠実に徹したデザインされた服は、派手さがなく、むしろ耐久性があり、時間の潮流に流されません。それがファッションの本質であり、持続可能性への第一歩なのです。」と述べている。
その他にも、特設ショールームでは62ブランド(ウィメンズ18ブランド、メンズ4ブランド、ユニセックス22ブランド、バッグ・シューズ12ブランド、ジュエリー6ブランド)が世界中のバイヤー向けに新作を展示した。また、ブランドの代表によるSDGsへの取り組みやファッションの新作の制作過程などを話すプレゼンテーションも行われていた。
来場者のリアルなファッションをお届け!
会場にはバイヤーをはじめ、モデル、インフルエンサーなどファッション愛好家が集まる。ファッションウィークといえば最新のトレンドが集まる場所でもあることから、スナップ写真を通じて、リアルタイムでどのようなスタイルが流行しているのかを記録することができる。筆者も何組か声をかけさせていただき、撮影した。
AWの時期ということもあり、レザーやジャケットを使ったコーデが多く見られた印象だ。靴は厚底やブーツを使ったスタイルが多めの印象。
また、今年は外国人バイヤー・モデルも多く来場していた。ソウルファッションウィークは例年パリファッションウィークの翌週に開催されていたが、2024年は9月4日から9月9日までの期間にずらして開催された。この変更によってより多くの海外バイヤーが訪問しやすくなり、韓国ブランドの商品買い付けを増やすこととなった。
また今年は数々のアイウェアブランド(サングラスや眼鏡)が注目されるようになった。例えば「Gentle Monster」は韓国を代表するアイウェアブランドで、K-POPアイドルやハリウッド俳優にも愛用されており、エッジの効いたデザインが特徴的。他にも「BLUE ELEPHANT」は 1970年代のアメリカンクラシックとヴィンテージをモチーフにしたデザインが特徴で、リーズナブルな価格帯で大人気だ。
今回のファッションウィークでも、洋服だけでなく小物までこだわったスタイリングを何度も見かけた。
ファッションウィークに参加する人々は、自分のスタイルを表現するためにスナップ写真を撮られることを楽しんでいた。
会場ではスポンサー企業によるPOPUPイベントも
ソウルファッションウィークの協力企業には車のレクサスや済州三多水( 済州島のミネラルウォーター)、洗剤のSnuggleなどがラインナップ。その中でもSnuggleは会場で大規模なPOPUPを開催し、ひときわ目立っていた。
人気タレントが登場し、実際に商品を使用して魅力を伝える場面も。合わせてSNSイベントも開催。指定のハッシュタグをつけてアップすると限定グッズや人気の消臭スプレーをプレゼントしてもらえる。
車のレクサスは新作モデルの展示を行うとともに、韓国プリクラが撮れるブースを用意した。また、招待されたバイヤーがDDPとファッションエリア間を安全かつ迅速に移動できるよう、電動車両での移動サービスを提供した。
大盛況のソウルファッションウィーク
ソウルファッションウィークの主会場はDDPであったが、近辺の地区でも多くの参加ブランドによって盛り上げられていた。例えば聖水(ソンス)地区では全36ブランドが立ち並ぶ。
聖水(ソンス)はソウルの東部に位置するトレンディなエリアで、かつては工場地帯だったが、近年ではおしゃれなカフェやショップ、アートギャラリーが立ち並ぶ人気スポットに変貌した。中心部にある「Dior」の周り一体は、様々なブランドが立ち並び、常に多くの人で賑わうスポットだ。
また、漢南(ハンナム)地区でも全36ブランドが名を挙げる。
漢南(ハンナム)はソウルの中心部に位置する高級住宅街であり、文化と芸術の街としても知られている。おしゃれなカフェやショップが立ち並ぶほか、ファッションブランドのフラッグシップストアも多く、ショッピングを楽しむことができる場所だ。大通りには「DIESEL」や「cos」などの世界的ブランドが、そして「Mardi Mercredi」や「emis」など韓国発ブランドも入り組んだ道に多く点在する。
筆者はこの2つの場所も実際に訪問し、それぞれの雰囲気の違いやトレンドファッションを感じてきたので比較しつつ、近日記事として公開しようと思う。
最後に、実際に会場に参加してみて
次回は韓国の地区ごと(聖水・漢南・弘大)のファッショントレンド、そしてそれぞれ違う街のリアルな雰囲気を比較しながらお届けする。次の記事公開も、楽しみにしていてほしい。