ファッションは、社会と無関係ではいられない。

2026年1月22日(木)、文化服装学院にて開催された、文化服装学院×SHIBUYA109エンタテイメント×ZOZOによる産学連携企画の公開プレゼンテーション。
Z世代の学生たちが、自らの身近にある社会課題を見つめ、古着を用いたアップサイクル作品として表現するこの取り組みは、今年も進化を遂げた。

会場では、文化服装学院ファッション流通科1年生・約300名、全44チームによる「44LOOK」のランウェイショーが実施され、衣服を通して語られる“今の社会”が次々と立ち上がっていった。

Z世代が向き合う「社会課題」を、服で語るということ

本企画で学生たちが取り上げたテーマは、「ネグレクト」「闇バイト」「マイクロアグレッション」「AIによるフェイクニュース」「ファストファッション」など、多岐にわたる。

共通していたのは、どれも「ニュースの向こう側」ではなく、自分たちの日常の延長線上にある問題として捉えられていたことだ。

使用されたのは、ZOZOが提供した「ZOZOUSED」の販売基準を満たさなかった古着約600点。単なるリメイクではなく、素材の意味や背景を再定義し、社会課題と結びつける“アップサイクル”として再構築されていた点が印象的だった。

ランウェイでは、服のデザインだけでなく、モデルの歩き方、表情、スタイリング、音楽まで含めてひとつのメッセージとして成立しており、学生作品とは思えない完成度の高さが会場の空気を引き締めていた。

入賞作品はこちら!

最終審査による3位には「過剰消費主義」(写真右)、準優勝には「MBTI診断による偏見」(写真左)が選出。
そして最優秀賞には、「ネグレクト(育児放棄)」をテーマにした作品(写真中央)が選ばれた。

ネグレクトは、暴力のように目に見える形で現れにくく、外からは気づかれにくい社会問題。その“気づかれなさ”や“放置される感覚”を、服の構造やレイヤー、シルエットで表現していたのが非常に印象的だった。また、スカート部分には子ども虐待防止のシンボルであるオレンジリボンが施され、学生たちによる強い意思表示が感じられた。

一見すると整っているようで、どこか不安定。肌を覆うはずの衣服が、完全には守ってくれないような違和感。その視覚的な違和感が、ネグレクトというテーマと静かに、しかし強くリンクしていた。

(この作品を制作した6-Aチームのメンバー)

6-Aチームのリーダー小嶺さんは、

「メンバーのうち2人が中国人ということもあり、最初はコミュニケーションの難しさを感じる場面もありました。ただその分、沢山のアイデアが出てくるチームでもあって、何度も話し合いを重ねながら進めていきました。最終的にルックを固めるまでには時間がかかりましたが、みんなが納得できる作品に仕上げることができたと思います。

ジャケットの持つフォーマルな印象を活かしながら、そこに社会問題をどう表現するか、チームで何度も試行錯誤しました。」とコメントした。

審査員からは、作品の完成度だけでなく、テーマへの向き合い方そのものを評価する声が多く聞かれた。
SHIUYA109エンタテイメント担当者は、

「SHIBUYA109のお客様層にも刺さるテーマも多く、作品の完成度にも感動しました。社会課題と向き合うテーマがありながら、未来へ発信していくこともポイントだと思うので、楽しく見させていただきました。ありがとうございました。」とコメント。

また、文化服装学院学院長の相原先生は、

「プレゼンはどのチームもよく練習してきたなと感じ、本当に採点に迷いました。皆さん試行錯誤しながらも作品を作ってよく頑張ったなと思います。素敵なショーを見せていただいてありがとうございました。」と講評した。

ファッションを“売るもの”ではなく、“伝える手段”として捉える姿勢が、今回の審査全体を通じて重視されていたことがうかがえる。

ファッションが、社会との接点になる瞬間

本企画は、2021年にSHIBUYA109渋谷店で実施されたSDGsポップアップを起点に発展し、2024年度からはZOZOも参画することで、より深い社会課題の掘り下げと発信へと進化してきた。
今回のプレゼンテーションは、その集大成とも言える内容だったように思う。学生たちは、正解のない問いに向き合い、自分の言葉と表現で社会とつながろうとしていた。

選出された12作品は、2月25日(水)からSHIBUYA109渋谷店で展示され、さらにZOZOTOWN内「elove by ZOZO」では、制作過程を追ったドキュメンタリーも公開される予定だ。
ランウェイだけで終わらず、多くの人の目に触れる場が用意されている点も、この取り組みの大きな意義だろう。

おわりに

今回のショーを通して強く感じたのは、Z世代は、社会課題に無関心なのではなく、どう向き合えばいいかを模索している世代なのだということだ。

服をつくることは、単に美しさを競うことではない。誰かの声にならない感情や、見過ごされがちな問題を、形にして差し出す行為でもある。
「ネグレクト」をテーマにした優勝作品が示したのは、派手な主張ではなく、静かに問いを投げかけることの強さだった。

この産学連携企画が、学生たちにとっての学びにとどまらず、私たち一人ひとりが社会と向き合うきっかけになっていく。そんな未来を、確かに感じさせるランウェイだった。

〇文化服装学院

文化服装学院は大正8年(1919年)に洋裁学校として産まれ、1923年に日本最初の服装教育の学校として認可されて以降、約100年にわたって日本のファッション教育の中心的役割を果たしているファッションスクールで、主な世界のファッションスクールランキングでも常に注目されています。

これまでにBUNKAを巣立った卒業生は30万人以上。日本のみならず世界のファッションシーンの第一線で活躍する人材を輩出しています。

HP: https://www.bunka-fc.ac.jp/