文化服装学院と株式会社SHIBUYA109エンタテイメントが、ファッションEC「ZOZOTOWN」を運営する株式会社ZOZOと連携し、身近に感じる社会課題を古着のアップサイクル作品を通じて発信する産学連携コラボレーションを実施した。

本企画では文化服装学院ファッション流通専門課程の1年生250人が40チームに分かれ、株式会社ZOZOから提供された古着約600点を使用しアップサイクル40作品を製作。製作した40作品から15作品を選考し、2025年1月24日(金)の公開プレゼンテーションにて上位3位、そしてZOZO特別賞を決定する。

今回筆者はこの公開プレゼンテーションに参加。文化服装学院にて既に選抜された15チームの発表を見させていただいた。

公開プレゼンテーションに参加!

今回は文化服装学院B館の20階、B201ホールにて開催された。前方に大きなステージがあり、審査員席には株式会社ZOZO、YuumiARIAデザイナー、株式会社SHIBUYA109エンタテイメント、文化服装学院学院長の4名が並んだ。審査基準はテーマ発見・分析力、コンセプト発想力、アップサイクル度、ヴィジュアルクリエーション力、プレゼン力の5項目だ。

文化服装学院は2021年にSHIBUYA109においてSDGsをテーマにしたPOPUPを行い、それをきっかけに2022年からはアップサイクルファッションを通じて “Z世代が感じる社会課題” を発信する取り組みを行っている。

今年度はカリキュラム内容や発信内容をブラッシュアップし、社会課題の背景やそれらが原因として起こる問題を深掘りし、未来へ向けたメッセージをプレゼンテーションすることとなったという。この取り組みを通し、社会課題の理解を深め、自身が今できることを実践していくことや、多くの方に知ってもらうことを目的としている。

様々なテーマの作品たち

このイベントでは、学生たちが思う様々な社会課題をテーマに作品が作られている。例えば、「ジェンダーの自由」「マイノリティ問題」などLGBTQ問題をはじめ、「自殺」「うつ病」「睡眠障害」、「世界の徴兵制度」「原爆の風化」など歴史の問題まで様々だ。

それぞれ制限時間内でパワーポイントを使いながらプレゼンテーションをする。作品撮りやプロモーションビデオの制作も生徒たち自身で行い、発表した。どれも本当に完成度が高く驚いた。

上位3チーム、そしてZOZO特別賞を発表!

全15チームの発表が終わると、ついに結果発表の時間に。どれも素晴らしい発想力と表現力であったが、見事に選ばれたのは以下4作品となった。

最優秀賞

5組Aグループ「ルッキズム」(左から2番目)

整形外科や美容の広告では「二重が可愛い」「小顔が美しい」など、頻繁に社会が作った美の基準の押し付けが行われている。その結果、日本は容姿コンプレックス世界1位。自己肯定感の低下によって摂食障害や醜形恐怖症なども引き起こされている。

5組Aグループは「唯一無二の花」をテーマに、自分だけが持つ個性を愛してほしいというメッセージを込めて制作した。靴には悪質な広告をあしらい、それらから脱却する意味を込めている。

優秀賞

1組Cグループ「学びの格差」(写真右から2番目)

家庭環境と学びの格差は切っても切れない関係だ。そして現在子供の貧困、教育格差を放置すると生まれる将来の損失は43兆円にも上ると言われている。

1組Cグループは左右で違う見え方をするドレスを制作し、学びに格差があることを可視化させた。左側はパッチワークやダメージ加工を施し、困窮・貧困を表した。対して右側はボリューム感のあるスカートや様々な素材を使い、富裕層を表した。トップスは制服のシャツをイメージし、付襟とリボンでアレンジした。

4組Cグループ「セカンドレイプ」(写真右)

日本では女性の4人に1人が性被害にあった経験があり、そのうち75%が相談相手に傷つくことを言われた経験がある。「ちゃんと断らなかったから」「露出の多い服を着ているのが悪い」といった言葉で何も悪くない被害者が多くのトラウマを植え付けられている現状だ。

4組Cグループはこのような「セカンドレイプ」を題材に、女性の強さ・自由を象徴する「女王蜂」をモチーフに作品を完成させた。強さを表現した赤をポイントとし、大きく生えた羽は片方ボロボロに。

ZOZO特別賞

4組Bグループ「いじめ」(写真左)

昨年度全国で認知されたいじめの件数は73万2568件で、過去最多となった。いじめが原因の自殺や不登校、精神疾患は年々増加傾向にある。政府は教育委員会や相談窓口の開設を急いでいるが、それでも全てのいじめがなくなるわけではない。

4組Bグループはいじめを「加害者」「被害者」「傍観者」の3つの要素に分け、誰しもがその立場になりかねないと考えた。コンセプトは「表裏一体」で、赤を加害者、青を被害者として対照的なデザインに仕上げた。そして2つの色を混ぜて生まれる「紫」を傍観者としてヘッドドレスや靴に配色した。

ZOZO担当者は、「今回 “いじめ”というテーマで被害者・加害者・傍観者という3つの視点から捉えた、想像の斜め上をいく作品でした。洋服づくりに関しても、6枚のシャツを使ってここまでの表現ができることに感動しました。ZOZOとしても、自分たちだけでなく仲間や社会がより幸せになっていく世界を作っていきたいと思っています。ここまでありがとうございました。」とコメントした。

全ての発表・表彰を終えたあと、文化服装学院学院長の相原さんは、「社会問題をテーマにアップサイクルという、本当に難しい課題に取り組んでいただきました。服はいつもシルエットや縫製を基準に評価していますが、今回はテーマが社会問題ということで審査もなかなか難しかったですね。
最優秀賞は文句なしの1位でした。作品が際立っていてすごく前向きに、見ている私たちを元気にしてくれる作品でした。また特別賞はチェック柄を上手く取り入れて、アンバランスなのですがそれがまた生きた可愛い作品になったと思います。
選ばれなかった作品も本当に完成度が高かったので、ここに参加したこと自体にすごく意味があったと思います。これからも社会問題を考えながら服に取り組んで、頑張っていってほしいと思います。」と語った。

優勝チームにインタビュー!

今回、「ルッキズム」をテーマに制作し、見事優勝に輝いた5組Aグループにインタビューさせていただいた。

――優勝した率直な感想を教えてください。

チーム皆で時間をかけて作ってきた作品なので、報われて良かったし、選ばれて本当に嬉しいです。「ルッキズム」という社会課題から連想した服のデザインを各々でデザインを出し合って、「一人一人が美しくて可愛いものである」というイメージに一番合ったのがこのデザインで採用しました。

――どのくらいの期間で制作したのでしょうか。

期間的には授業も含めて2カ月くらいなのですが、放課後残ったり、冬休みはメンバーの家に行って作ったりと、2カ月のすべての時間を使って苦労しながらやってきました。

――特にこだわった部分はどこですか。

ドレスについたお花はアップサイクルで古着を切って作り、全て手で縫って制作したのでとにかく時間がかかりました。

また、デザイン案の段階ではダークな感じで怖い印象のドレスだったのですが、せっかく可愛いドレスなのでポップな感じでいこうとなり、女の子たちのそれぞれの個性やバラバラな可愛いを落とし込んで作りました。とにかく暗い印象にしたくなかったので、生地もあえて明るい色を選び、一際目立つカラフルな作品に仕上げました。

――SHIBUYA109に展示されることへの意気込みをお願いします!

私たちもよく行くSHIBUYA109さんに飾っていただくことはすごく意味のあることだと思うし、光栄です。たくさんの人に見ていただいて、109に来ている女の子たちに自信を与えたり、勇気付けられたらいいなと思います。

SHIBUYA109にて展示!

選ばれた作品は、以下の期間でSHIBUYA109渋谷店にて展示される。興味のある方は、是非実物を見てみてほしい。

【上位3チームの作品】
2月25日(火)~3月3日(月)《SHIBUYA109渋谷店 2階COCO SPOT》
3月4日(火)~3月10日(月)《SHIBUYA109渋谷店 3階・4階・5階エレベーターホール》

【その他12チームの作品】
3月4日(火)~3月10日(月)《SHIBUYA109渋谷店 3階・4階・5階エレベーターホール》

〇文化服装学院

文化服装学院は大正8年(1919年)に洋裁学校として産まれ、1923年に日本最初の服装教育の学校として認可されて以降、約100年にわたって日本のファッション教育の中心的役割を果たしているファッションスクールで、主な世界のファッションスクールランキングでも常に注目されています。
これまでにBUNKAを巣立った卒業生は30万人以上。日本のみならず世界のファッションシーンの第一線で活躍する人材を輩出しています。
HP: https://www.bunka-fc.ac.jp/