オリンピックの主役は、言うまでもなくアスリートだ。しかし近年、その価値は競技成績だけでは測れなくなっている。
ミラノ・コルティナ冬季オリンピックを前に、アスリートは「勝つ存在」から「魅せる存在」へと役割を拡張しつつある。その象徴が、ファッションブランドのアンバサダーとして起用されるアスリートたちだ。
スポーツとファッションはいま、どのように結びつき、どんな価値を生み出しているのか。ミラノ開催という文脈から、その変化を読み解いていく。

成績だけではない、アンバサダー選定基準の変化

かつてブランドアンバサダーに求められていたのは、圧倒的な実績や知名度だった。しかし現在、評価軸は大きく変わっている。
重視されるのは、世界観・ライフスタイル・発信力。競技外での立ち振る舞い、私服のセンス、SNSでの言葉選びまでが、ブランドイメージと重なるかどうかが問われる時代だ。
アスリートは競技場の外でも、ブランドの思想を体現する存在になっている。

ミラノという舞台が意味するもの

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ミラノは、世界有数のファッション都市。この街で開催される五輪では、アスリートの立ち姿や佇まいまでもが見られる。
競技後のインタビュー、移動時の装い、公式イベントでのビジュアル。これらすべてがファッション文脈で切り取られる可能性を持っている。
ブランドにとってミラノ・コルティナ五輪は、単なるスポーツイベントではなく、世界に向けたビジュアルコミュニケーションの場なのだ。

ファッションも注目のアスリートとは?

ここで、すでにファッションとの関係性を持ち、五輪という舞台で再び注目される可能性が高いアスリートを挙げてみたい。

フリースタイルスキーのEileen Gu(アイリーン・グー)は、Instagramフォロワー220万人(2026年2月現在)で、モデルとしても活躍。「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」を始めさまざまなラグジュアリーブランドの広告に登場している。また、中国版「ヴォーグ(VOGUE)」や「エル(ELLE)」の紙面も飾っており、アスリートとラグジュアリーの距離を一気に縮めた存在だ。

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また、スノーボードのChroe Kim(クロエ・キム)は、ストリートカルチャーとスポーツを横断する存在として、Z世代向けブランドとの親和性が高い。エル(ELLE)の表紙を飾るなど、ファッションアイコンとしての存在感も強めている。

日本人選手の中で、ファッション文脈でも際立つ存在は?

日本人アスリートの中で、競技力とファッション性の両面から評価されている存在として挙げられるのが、スノーボードの平野歩夢だ。
冬季競技のトップアスリートでありながら、彼は早くからストリートカルチャーとも強く結びついてきた。

その象徴が、VANS(ヴァンズ)との関係性である。
平野はVANSのシューズを長年愛用し、ブランドの持つスケートカルチャーやストリートの精神を体現する存在として、ビジュアルやプロモーションにも登場してきた。競技用のスノーボードウェアだけでなく、日常のスタイルにおいてもVANSを自然に履きこなす姿は、「競技とライフスタイルが地続きである」ことを体現している。

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平野歩夢の魅力は、派手な自己主張ではなく、静かな佇まいの中にある説得力だ。世界最高峰の舞台で結果を出しながらも、ストリートカルチャーへのリスペクトを忘れない。その姿勢は、VANSが大切にしてきた価値観とも重なる。

ミラノ・コルティナ五輪において、平野歩夢はメダル候補であると同時に、日本発のカルチャーとファッションを世界に自然体で伝える存在としても注目されるだろう。
競技の外でも視線を集める彼のスタイルは、スポーツとファッションの距離が縮まった現代を象徴している。

まとめ

ミラノ・コルティナ五輪では、メダルの色と同じくらい、「誰が、どんなブランドをまとって世界に立つのか」が記憶に残るだろう。
アスリートは競技者であると同時に、価値観や生き方を体現する存在へ。ブランドは服を売るだけでなく、思想を語る存在へと進化している。その交差点に立つのが、オリンピックという巨大な舞台だ。

アスリートをファッションの視点から見ることで、オリンピックはより立体的で、より現代的なイベントとして立ち上がる。競技の先にある“スタイル”に目を向けたとき、スポーツとアパレルの未来が、確かに見えてくるだろう。