株式会社こたつが運営するエシカル・クリエイティブ・コレクティブ「SHIFT80(シフトエイティ)」は、2025年2月15日(土)から2月20日(木)の日程で、東京・麻布十番のパレットギャラリーにて 「Tokyo Pop-up & Exhibition 『Kimono Meets Africa 再創造される着物』」 を開催した。
このPOPUPでは、ケニアで話題を集め人気を博したSHIFT80のアップサイクル着物の新コレクションを日本初公開。ケニアに溢れかえる古着と、日本の伝統着物とを、ケニアの才能あるデザイナー・職人らと協力し融合させる試みだ。
筆者は会期中、実際にPOPUPを訪問。古着と着物を組み合わせたアップサイクルアイテムを実際に拝見するとともに、坂田さんにインタビューさせていただいた。
麻布十番の一角にあるギャラリー
今回の会場は麻布十番にあるパレットギャラリー。店外にもポスターが張られている。
入るとすぐに目に入るのが、左のラックの吊るされたアイテム。これも古着と着物を組み合わせて作られたアイテムの一つだ。シャツ(古着)と、着物の柄を上手く利用して素敵なデザインに仕上がっている。全てケニアに住む人々が、デザインから縫製まで行ったものだという。
中央に吊られているのは、ケニアで廃棄されている紅茶クズから作られた特製の紅茶デニム。植物残渣をアップサイクルして素材開発を行うCurelabo株式会社から提供された生地で、技術を活用して国際協力を行うNPO法人OSAジャパンとのコラボレーションで完成した。着物生地をアクセントに使った、目を惹く一着になっている。
ケニアはアフリカ最大の古着輸入国であり、日本を含む世界中から大量の古着が流れ込んでいる。この背景のもと、SHIFT80は日本で着る機会が減った着物と、ケニアで廃棄される運命にある古着を組み合わせることで新たな命を吹き込み、サステナブルなファッションの新たな可能性を創出することを目指している。
このように着物の昔ながらの綺麗な柄・生地を活かしつつ、古着と組み合わせて唯一無二のアイテムを多数取り揃えている。どれも日常使いできそうなものばかりだ。
小物や写真の展示も!
一点物のアップサイクルの着物アイテムに加え、アフリカ難民と共に制作製作したポーチ・バッグ、南部アフリカ・エスワティニで製作された古紙のアップサイクルピアスなどのアイテムも販売されている。ポーチはどれもカラフルで可愛らしい。
また、SHIFT80のフォトグラファー政近遼さんがケニアを訪れて撮影したという写真の展示もされている。「スラム街」と聞くと暗くて怖いイメージがあるが、実際は明るく活気のある街でもあるとのこと。
坂田さんにインタビュー!
今回は「SHIFT80」の代表で旅マニア、エッセイストでもある坂田ミギーさんにお話を伺った。
――坂田さんの自己紹介をお願いします!
坂田ミギーと申します。もともと広告会社でクリエイティブをやっていたのですが、あまりの忙しさに働きすぎて倒れてしまい…。そこから心機一転、世界一周の旅を始めて、ケニアに行きました。ケニアの首都・ナイロビの中には「キベラ」という東アフリカ最大級のスラム街があります。そこに立ち寄った時に友達がたくさんできて大好きな街になったので、帰国した後も彼らと繋がりながら何かできないか、一緒にやっていきたい、という思いでビジネスを立ち上げ、「SHIFT80」が誕生しました。
「SHIFT80」は余剰利益(分配可能な利益)の80%をケニアの困難な状況にある子どもや若者に再分配をして、世界を少しずつでもシフトさせたい、という意味が込められています。
――モノづくりをする上でアパレルを選んだ理由は何かありますか。
彼ら自身が誇りを持って働けたり、得意だったりする分野でビジネスができたらいいなと思っていて。私がケニアに通って11年、そのなかで発見した「日本の人に喜んでもらえそうな仕事」が、ケニアでは当たり前にある「仕立て」や「お直し」だったんです。ケニアではセレモニーやウェディングのときには、皆でお揃いの衣装を仕立てることが多いので、服作りの得意な人はスラムにもたくさんいます。
こんな理由で、私自身は全くアパレルの知識や経験がないのですが、服や雑貨を彼らにつくってもらって販売するようになりました。
――今回のPOPUPのご説明をお願いします。
ケニアはアフリカで1番たくさんの古着を輸入している(させられている)国。「SHIFT80」では古着同士を組み合わせたアップサイクルの服作りを2年前から作っていました。
そして最近、日本で多くの着物が捨てられてしまっているという問題も耳にしたので、古着と着物を組み合わせた服も面白いのではないかと思い、新たなコレクションとして製作してみました。せっかく日本とケニアのシナジーでやっているので、掛け合わせたら面白そうだなって!このデザインも縫製も、全てケニアのデザイナー、職人たちが手がけています。
――現地での反応はいかがでしたか。
ケニアでも「着物」という単語自体は皆知っているんです。しかし、ガウンの形を着物だと思っているので、「本物の着物ってこんなに美しい生地なんだ!」と好評でしたね。
日本では普段着物を着ない方でも、これなら日常的に着物の美しさに触れられるね、とお言葉をいただいています。また、着物が好きな方にもご好評いただき、「こんな取り入れ方もあるんだ!」とお褒めの言葉をいただきました。
――今後について意気込みをお願いします!
4月に行われる京都国際写真祭のサテライトプログラムの一環として、私たち「SHIFT80」の出展が決まりました!私たちのチームがケニアのキベラにある様々な暮らしを撮影してきた作品です。被写体はいつも一緒に遊んでいる仲間たちがほとんど。スラムの中でありながら日々工夫をして楽しむ彼らの暮らしを見ていただけたらなと思っています。服の展示販売のポップアップとは異なり、今までとはまた違う層の方々に見ていただけるかなと思うので、楽しみです。
――ありがとうございました。
現地のテキスタイル廃棄物をアップサイクルしてファッションアイテムを作り出し、地元のデザイナーや職人と協力し、彼らのスキルを活かしながら雇用を創出している「SHIFT80」。活動は単なるファッションにとどまらず、教育支援や衛生用品の提供、女性のエンパワーメントなど、コミュニティ全体の支援にもつながっている。様々な国を飛び回ってきた坂田さんだから生み出せるクリエイティブが、今後も楽しみだ。
〇SHIFT80
HP: SHIFT80(シフトエイティ)公式オンラインストア – SHIFT 80(シフトエイティ)公式オンラインストア
Instagram: SHIFT 80(シフトエイティ)(@shift80jp) • Instagram写真と動画